消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の審議を巡って民主党の混乱が続いた。ようやく自民・公明両党と法案提出の合意ができたが民主党内では小沢元代表グループが強硬に反対していた。
 野田首相は政治生命をかけてやり抜くと表明していたが、採決反対派が離党や新党結成の可能性をちらつかせ、双方が味方代議士の獲得を巡ってせめぎ合いを続けていた。野党は解散・総選挙を視野に入れ、民主党の自壊を期待している。
 テレビ番組で中間派議員の言葉が胸に残った。「私は今回の法案採決には反対です。だが党として決めた以上賛成票を投じます。私は社会福祉など数々の信念を掲げて有権者と約束を交わしている。しかし何事もすべての人々が満足という政策はない。十分議論して決めたら党の決定に従って今後も活動を続け、その中で精一杯自分の信念を主張し実現できるように努力します」。本人にとってはつらい苦渋の選択だ。
 政治は妥協の連続、状況に応じ相手によってさまざまに策を練り協議を重ねて折り合える合意点を見い出し、自分の信念に近づけてゆく。これが政治家の使命であろう。
 今回の議論でいま一つ国民がすっきりしないのは、国の将来を決める大問題でありながら、次期選挙で生き残りたい、自グループの勢力を広げたいという思惑が先行していたのが透けて見えたからだ。
 よき野党がいて政治は育つ。今回の政局を生かし、一人ひとりの議員が自分の保身でなく、この国の将来のあり方、国際社会での日本の立ち位置を頭に置いて真剣に悩んでほしい。
 今まではロサンゼルスに住み国の外から日本を見守ってきた。中から見る日本は政治家も国民もメディアも政治に関しては成熟度が十分でないように思える。
 民主党はあまりにも幅広い意見の政治家が集まって党としてのまとまりが薄い。これを機に割れても再生を期す選択肢もあろう。一方、大阪や東京から第3極の政治グループの台頭もある。
 早く日本の政治が成熟度を増し、国際社会の枠組みが激変する中で日本が取り残されない賢明な行動をとれることを切に願っている。【若尾龍彦】

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