日本を離れて海外で生活する日本人はおよそ120万人。このうちアメリカが39万7937人と最も多い。(外務省「海外在留邦人数調査統計」平成24年速報版)
この数字は在留届を基礎資料とした推計。届け出ない人も少なくないので、実数はもっと多いはず。
一方、日本人の海外移住は1868年(明治元年)に、いわゆる「元年者」と呼ばれた153人が農業移民としてハワイに渡ったのが最初。その後、明治新政府公認の「官約移民」として1885年にハワイに移住した944人を皮切りに、1894年に移民業務が民間に委託されるまでに約3万人が移住している。
日本人の海外移住は南北アメリカ大陸に続き、現在は豪州やタイ、マレーシアなど東南アジア諸国にも広がってきていて、日本人移民とその子孫、いわゆる海外日系人は約300万人に達している。それぞれの国での日系人の評価はおおむね良好で、それは一人ひとりの真面目な努力が蓄積されたものと言っていいだろう。
周知のように、アメリカでは大統領継承順位第3位の連邦上院仮議長にまで登りつめたダニエル・建・イノウエ、南米ペルーの大統領になったアルベルト・謙也・フジモリをはじめとし、その国の各界で指導者になった人は多い。また、各地に日系コミュニティーを作り上げて日本文化の継承と普及に努めている人たちも多い。
こうした世界各地の日系人の長い歴史や現在の活動状況など、海外日系人に関する正確な情報を提供する専門誌として高い評価を受けていた季刊「海外日系人」(編集・海外日系新聞放送協会/発行・海外日系人協会)がこのたび、40年の歴史に幕を下ろすことになった。廃刊は経済的な理由とのことで、これまでの実績、役割りを考えると極めて残念だ。
発行元の公益財団法人海外日系人協会は、外務省所管の国際協力機構(JICA、ジャイカ)と連携しながら事業を推進してきたところも多い。でもJICAのように中央官庁と太いパイプを持たないせいか、予算面(交付金)で冷遇されていたともいえる。
日本政府はことあるごとに「現在の日本の外交基盤は、日系人の活躍があったからこそ」などと言いながら、実際は、かつての移民=棄民という思考法の亡霊を今でも徘徊させているのかもしれない。【石原 嵩】