89歳の男性の魂の叫びに世界中が注目した。「『退屈』で死にそうです。私を救って下さい!」
 英国在住のジョー・バートレーさんは先日、地元紙に求職広告を掲載した。「職望む。89歳の高齢者。週20時間以上の勤務希望。清掃や簡単な庭仕事、日曜大工など、まだまだなんでもできます」。広告を見ると働く意欲旺盛。何とも頼もしい印象がにじみ出ている。
 バドレーさんは以前、看板製作の仕事をしていたが6年前に引退。2年前に妻を亡くし、以来、ひとりで引退者生活を送っていた。しかし「何もしないでいることは自分らしくない。何かに貢献できるチャンスをみつけたい」と思いたち心機一転。「再び自分らしさを取り戻し、生き生きと暮らそう」と求職広告を掲載した。
 89歳の高齢者の求職広告に最初は誰が目を止めてくれるかと思っていたバートレーさんだったが、予想に反してジョブオファーはたくさん舞い込んできたという。
 一旦引退すると、復帰することは勇気がいることかもしれない。しかし自分らしく、生き生きとした毎日を送るためにバートレーさんが踏み切った一歩は大きかったと思う。
 オレゴン州立大学によると、退職した年齢が高齢であればあるほど、長生きするという研究結果が報告されている。引退すると他者との関わりあいが減少するが、働くことで社会とのつながりが増え、明確な目的意識も芽生え、ストレス軽減や自己管理能力の向上にも効果があるという。
 またシカゴ大学の研究結果によると、たとえ無意味であっても熱中できるものがある人は、何もしないでいる人より幸福度が高いという。
 米国には定年退職という概念がないため、80代後半であっても仕事をしている人がたくさんいる。これは米国の良いところだと思う。日系コミュニティーにもさまざまな団体があるが、60代のメンバーはまだまだ「若造」、80代くらいでようやく「一人前」と呼ばれ、コミュニティーの活性化や日本文化の継承のため尽力する人々の姿がある。バートレーさんのニュースを聞いて、日系社会の高齢者がいつも元気であるゆえんが納得できた気がした。【吉田純子】

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