60周年の花展はLA支部員が65作品、日本からのゲストは派遣教授らの53作品を出展。週末の2日間で、延べ1000人の来場者が鑑賞し、表現力の豊かな作品が日米文化会館のギャラリーを彩り、支部の「還暦祝い」にまさに花を添えた。
約600人が聴き入ったアラタニ劇場でのデモンストレーションで家元は、テーマの「美しさの源」に沿い、池坊の哲学を力説しながら、当地の花材を用いて次々に生ける模範を披露する。光が正面から作品に当たるのが最も美しいとされる他の流派に対し、池坊は斜め後ろから光が差す「陰」と「陽」を強調。芸術性の高い池坊のテクニックのみならず「いけばなは、花を『挿す』のではなく、花を『生かす』こと」を心がけることや、「心の文化」と表現する華道の心構えなどの奥義も説いた。西田永教授は、数世紀にわたり継承する池坊の正式な儀式の一つである礼式生けを惜しみなく伝授した。
祝賀晩餐会では、LA支部が本部から表彰を受け、参加者約290人が温かい拍手を送った。赤松支部長は謝辞の中で、池坊の歴史の長さについて「今年555年を迎え、大きな節目の年である」と強調。同支部設立の経緯を説明し「60年前、まだ若かった家元が『池坊のいけばなを海外に広めたい』というビジョンと熱意を持って最初に設立されたのが、このロサンゼルスである」と誇り、「その間、われわれは家元から限りない援助をもらい、こうして60周年の祝賀会を盛大に催すことができた」と謝意を表した。
本部のある京都に出向き、数多くの行事に参加する弟子たちの積極性を紹介し「いけばなの喜びと感動を分かち合った」と振り返った。祝賀会の準備にあたり新たに思ったこととして「われわれ一人ひとりは、
「大成功に終わった」
胸を張る赤松支部長
記念行事をすべて終え、赤松支部長は「全米から集まった他の支部の方にも喜んでもらい、家元と教授陣からは『こんなにすばらしいプログラムを作ってもらいうれしい』と言葉をもらい、支部を挙げて、みんなで頑張ったかいがあった」と述べた。「特に若い会員がよく動いてくれて、大成功に終わった」と胸を張った。
45世家元池坊専永宗匠
LA支部にエールを送る
60年前のLA支部設立当初を「日本から遠く離れたところで、支部の方の顔も知らなければ何も知らないところで、池坊のいけばなを習っている方がこれだけ多くいらっしゃることにびっくりした」とを振り返った。「当時の人は亡くなって、随分変わってきているけど、いまだに池坊のいけばなを、こうして継いでいただいて、たいへんうれしい」と喜んだ。
支部のいけばなに対する姿勢を「幹部がわざわざ日本まできて、勉強しようという気持ちがある。わざわざ京都に来て何日間も泊まって勉強して、そしてそれをお弟子さんたちに伝えるという気持ちがすばらしい」と高く評価した。
弟子育成のアドバイスとして「師匠の技だけではなくて、心も伝えてもらいたい。ただ、型を教えるのではなく、いけばなにはもっと深いものがある、ということを教えてもらいたい」「花はいろんな表情があって、いけばなは昔から『足で生けよ』という言葉があり、自然の植物がどういう状態で、どういうところで生きているかを考えて生けることを教えてもらいたい」
日本と異なりLAはさまざまな人種が日本の伝統文化を継承している点について「人種によって、明るい色を好む人もあれば、そうでない人もいる。いけばなもその国によって、色がいろいろある。その国に合わせなければならない」と説いた。「今までのいけばなは、型だけだったけど、今は型だけでない。目に見えない姿を見せてほしい。見えなくても見える気持ちを持つことが大切」と持論を述べ「自然の花は美しくて、あだやか。しかし、その美しさを見いだすには人々の心がないとだめで、見いだす心を大切にしてもらいたい。花は生きているので、その生き物に対して、愛情を持って育てて、生けることが一番大事」