助け合いの精神で意気投合する池田直子さん(左)とチョイさん
 母の日のギフトが花開いた色とりどりのショーウインドーは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で打撃を受けた小東京の助け合い精神の一例だ。「1ドル、1ドルに店の将来がかかっているのはみんな同様だから…」。羅府新報の電話取材で、共存を願う2人の経営者が心意気と地元への愛について、語った。

母の日に備え、商品を棚に陳列する池田直子さん
 小東京のビジネスは皆、非常事態のパンデミックに打撃を受けている。ジェームズ・チョイさんのカフェ・ドルチェのような飲食店は宅配と持ち帰りのみの営業制限を、池田直子さんのブルーミング・アート・ギャラリーのような小売店は営業停止を強いられている。そんな中、カフェ・ドルチェのウィンドーが池田さんの店の品々で飾られた。
 手作りの日本風小物ギフトの販売も行われている。
 —2店のコラボレーションはどういうきっかけで始まったか?
 池田さん 3月初旬に日本からたくさんのかわいい商品を仕入れたが、販売のチャンスを失った。カフェ・ドルチェとコラボレーションができることになり、とても心強くうれしかった。心温かいすてきな仲間に支えられ、ありがたい。
 チョイさん ニッキー(池田さんの愛称)は近所でもいつも笑顔で、地域に温かみと落ち着きをもたらしてくれる人気者。店から通りを隔てて美しい店構えをいつも見ているのは良いものだし、プラザに特別な雰囲気をもたらしてくれている。文字通りご近所さんだし、提案を受けた時は二つ返事、考える必要もなかった。
 —池田さんの店にとって母の日は大切な祝日か? どんなものが特によく売れるのか?
 池田さん 毎年、母の日という特別な日のために日本からたくさんのギフトを用意しているが、今年は新型コロナウイルスで、お店で売ることができないのがつらい。母の日は特別な日なので、他店にはない日本から直輸入したかわいい手作りの折り鶴のイヤリング、着物の生地で作った化粧ポーチ、手鏡、眼鏡入れ、エプロン、ハンカチなど、お母さんがすぐに身に付けて使えるものが喜ばれている。
開くとカラフルな木が飛び出す立体式のギフトカード
 チョイさん うちの店頭にすてきなイヤリングやエプロン、大きな爪先のソックスなどのブルーミング・アートの小物商品が並ぶのを見るのはうれしいし、地域のみんなに助け合いの精神を広めるのもいいことだと思う。
 —新型コロナウイルスと「外出禁止令」は二人のようなスモールビジネスにどんな影響を与えているか?
 チョイさん 発令によりジャパニーズ・ビレッジ・プラザは人影もまばらになり売り上げは落ち込んだ。売り上げが通常の2割まで落ち込む日もあった。今もまだ、3割に落ち込む日も時々あるが、常連さんや地域の皆が支援のために出てきてくれ、徐々に売り上げが回復している。
 池田さん 私の店は小東京に開店して24年が経つ。湾岸戦争、リーマンショック、LA暴動や同時多発テロなど、さまざまな事件や緊急事態を経験しながらも、負けずに小さなビジネスを守ってきた。だが、今回は長期にわたって営業が停止され収入がない反面、毎月の請求書はいつものように届き、少しパニックになっている。支払いが出来るのか? この先どうなるのか? 精神的な不安や恐怖感を自分自身でコントロールするのが、とても大変だ。経験のない給付金申請の手続き方法なども、分からない事ばかりで苦労している。
 でも、先日からLTSCのボランティアからの温かいサポートをもらい、少し気持ちも楽になった。感謝の気持ちでいっぱいだ。
ウインドウを美しい母の日のカードで飾る池田さん
 —二人が初めて会ったときのことを覚えているか?
 チョイさん 正直に言うと初対面の事は覚えていないが、ニッキーのことは本当にずっと知っていた気がする。
 池田さん ジェームズと出会ったのは9年前、私の店の前にドルチェ1号店をオープンした時。その時はまだ独身で、イケメンがきたと喜んだ。どんな母親でも「自慢の息子」と思う好青年だった。
 近年、幅広い年齢層に来ていただける小東京に変化したことを、とてもうれしく思う。それは、仕事に情熱をかけるジェームズたちのような若いオーナーが増えてきたことに、一因がある。100年以上の歴史のある小東京の、さらなる発展が楽しみだ。これからも歴史と日本文化を守り伝えていける、他にはない特別な場所、人に優しいすてきな街にしていきたいと思う。人の優しさ、人の支援に感謝している。
 —外出禁止令が解除になりビジネスを再開した時の希望と願いは何か?
 池田さん この新型コロナウイルスの非常事態で失ったものは経済的にも精神的にも大きいが、この経験から得たものもたくさんある。小東京の温かい助け合い、地域社会の援助、周りの多くの人たちに支えられて暮らしていることを、あらためて実感した。
 チョイさん 私たちの最大の危惧は、パンデミックが終わっても以前のように人が戻って来ずに、再開が遅れたり、かなわない店が出てくるのではないかということだ。以前と同じ平常が戻る事を願い、小東京のにぎわいをもう一度見る日が待ちきれない。【フェニックス・ツォ、訳=平田真希子、写真=アンソニー・マーシュ】
ブルーミング・アート・ギャラリーの母の日ギフトで花開いたカフェ・ドルチェのウインドウ

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