日本語の授業の継続について話し合われたABC統一学区の理事会

 8月17日、ABC統一学区理事会ではセリトス高校の生徒と卒業生が日本語教育の維持存続を求めて次から次に発言した。理事たちは対面での会議だったがコロナ禍のため一般の参加はオンラインに限定されて行われた。その結果、同理事会は8月23日からの新学期にセリトス高校で日本語1(J1)の授業を開講する必要があることを、6対1の投票で可決した。
 だが、同校で長年にわたって日本語を教えていたジョイ・シオザキ=カワモト教諭が今夏に引退したあと、同校の日本語教育が段階的に廃止される可能性があるという懸念を和らげることは、ほとんどできなかった。

日本のスキルを使って日本からのゲストにインタビューするセリトス高校の生徒(写真、ジョイ・シオザキ=カワモト)

 討論の中で、アーニー・ニシイ理事は「プログラムが生き残るためには秋にJ1を開講することが不可欠である」と述べた。同理事は、日本語教育の終焉が地区の文化交流プログラムに与える影響について懸念を表明した。日本との交流に加えて、ABC統一学区は毎年2月に、戦時中の日系人強制収所の収容者が学生と教師に講演する「追憶の日」を設けている。「2021年の秋に必ず日本語の授業が提供されるようにしたい。そうしないと、コース全体が無くなってしまう。学年の半ばに授業を開始しても完全な単位を取得することはできませんから」。ニシイ理事はこのように話した。
 シオザキ=カワモトさんは羅府新報の質問に答えて、「これまで日本語は1〜4の教育過程で教えていた。自分の引退後も同じ授業スケジュールが引き継がれるものと思っていた」と述べる。「ところが、4段階の教育過程を準備していた後任の教師は、8月初旬にようやく学校区から連絡を受けたとき、それが2期間の教務であると言われた。セリトス校は、33人の生徒が希望していたにもかかわらずJ1の授業をなくし、さらにJ3の18人とJ4の18人の生徒を組み合わせて授業をすることにしたのです」。その後の抗議の結果として、前述のようにJ1の過程は復活することにはなった。「でも、単独授業にはなりませんでした。すでに18人の生徒がいる既存のJ2クラスの中に復帰するので、1〜2の組み合わせ授業を受ける生徒は少なくとも27人います。さらに悪いことに、生徒たちは春に提出した選択希望に基づいてクラスに振り分けられていません。それどころか、生徒たちはそのクラスが受講可能であることを口コミで見つけてから、アドバイザーにメールで依頼する必要があります」。ちなみに、前出の理事会で、同学区は同校にアメリカ手話を追加することも可決したという。
 9年生のケイラ・スズキさんは、この変更の影響を受けた生徒の1人。現在はJ1〜2を組み合わせたクラスに在籍している。母のコリーン・スズキダさんは「日本語の授業がなくなる可能性があるというウワサが広まったとき、娘は大きなショックを受けていた」と語った。
 夏休みの期間中には日本にいるオンライン家庭教師から日本語を学んでいたというケイラさんは、「長い1日の最後にある日本語の授業を、楽しみにしている。それは、他の勉強をやり終えた後にやっと私がものすごく情熱を注いでいることを学ぶ時間を与えられるという、ご褒美のようなものだ」と話す。「授業で日本語を練習するこの短い時間のおかげで、幸せな気持ちになれる。日本語の学習をクラスメートと共有したり交流したりすることが、これから4年間の私の高校生活を満足で満たしてくれるだろうと思う。私が望んでいるのは級友と一緒に日本語を学び続け、日本語を上達させること。もし学校が日本語プログラムを取り除いたら、日米両語に堪能というお墨付きをもらうという私の目標を達成したり、将来の機会を得ることはとても難しくなるでしょう」

集合写真を撮るセリトス高校と日本の高校生のグループ交換留学生(写真=エリヤ・ティン)

 理事会では1982年卒業のジュリアン・エリーさんが南カリフォルニアにおける日本企業の経済的影響に言及したプレゼンテーションをした。シオザキ=カワモト教諭から日本語を学んだ後、ロータリークラブの奨学金を受けて東京の上智大学で1年間勉強したというエリーさんは、「日本は私の人生のほぼすべての部分にプラスの影響を与えている。それはセリトス高の日本語プログラムのおかげです。日本語授業とクラブの活動はセリトス校でほぼ50年、一定しており、多くの生徒に多くの点で利益をもたらしてきた。この地域の多くの素晴らしい外国語の選択肢の中で、おそらくスペイン語の次にもっとも学生にとって潜在的な利益がある。まだ需要があるプログラムを縮小する必要があるとは思わない」と話した。
 多くの支持者が提起した問題の中には、日本語は「死にゆく言語」であるとした管理者側の理由付けがあった。また、多くの人が、重要な文化的価値を学び地域社会に還元する機会を提供する重要な活動として、セリトス高の「チカラクラブ」と全米優等生協会(JNHS)に言及した。同クラブはオレンジ郡フードバンクで食料詰めのボランティアを行い、軍人向けに2千以上のケアパッケージを提供している。最近の卒業生でチカラクラブの会長だったエリヤ・ティンさんは、「死にゆく言語」としての日本語は真実からかけ離れていると反論した。セリトス高が2001年から、日本の各務原からの高校生を受け入れていることも指摘。「セリトス高の私たちが海外からの生徒を受け入れて1日か2日ホストしている。チカラクラブとJNHSは、これまで400人以上の日本人留学生をセリトスのキャンパスに連れてきている。私は6人以上の日本人生徒を受け入れ、学校の友達に紹介し、米国の教育システムを体験してもらうことができた。これは、日本語を勉強している生徒にとって、日本語を話す絶好の機会でもある。留学生とのコミュニケーションは楽しかった!」と述べた。
 また、ライアン・スカンマホーンさんは、「日本語プログラムは高校の4年間を通して同じグループの人々と学び成長することができる。日本語習得だけでなく、校内で生涯にわたる友情や、家族のようなつながりを生み出すことができた」とコメントした。
 最近卒業したばかりのアラナ・フランチェスカ・クルスさんは、いま学生が日本語を勉強したいもう一つの理由として、「アバター、伝説の少年アン」や「鬼滅の刃 無限列車」などに代表されるアニメの人気を挙げる。「字幕なしでアニメを理解するという意欲だけでも日本語のクラスが拡大する絶好の機会だが、授業を断ち切ったら、そのような機会を逃してしまうでしょう」と述べた。
【グエン・ムラナカ】
 ABC統一学区 ロサンゼルス郡の南に位置するアーテジア、セリトス、ハワイアンガーデンズ、およびレイクウッドとロングビーチの一部を含む学校区。10のプリスクールと30の学校で構成されている。K—12の児童・生徒数は約2・1万人。

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