日本滞在中、使わせてもらっていたラップトップ・コンピューター(日本でいうノート・パソコン)の調子がおかしくなった。修理に持っていったところ、もしハードディスクが壊れていれば5万円近くかかるという。
 家族は、それくらい出すなら買い替えたほうが良いという気になり、私はそこで、デスクトップの安いものの購入を提案した。
 持ち歩いてまで使うことはなさそうだし、今はデスクトップは安いものが出回っているからというのが、私の思いだった。昨年、自宅のコンピューターを買いなおしたときに600ドル以下だったのを覚えていたからだ。
 ところが、家電量販店に行って驚いた。まず「いえいえ、今は普通のパソコンの方が高いです」との店員の言葉に。そしてまた、案内してくれた売り場で驚くことになった。ずらりと陳列された小さな箱型のコンピューター本体の横のモニターには、「テレビ、PCスクリーン、DVDレコーダー」と表記されている。3機能が1体となっていて、値段はいずれも十数万円。購入目的であるコンピューターだけのものは売ってない。
 わが家に初めてコンピューターがやって来たのは16年ほど前のことだ。2400ドルという金額は当時とてつもない大金だった。年月がたつにつれ、大金を投じたそれより何十倍も容量が大きく機能が優れたコンピューターが次々と登場し、その間にわが家も何台か入れ替わったが、価格は次々と下がっている。そして私は、それが世界の潮流だと思い込んでいたのだ。
 ところが、日本の市場は全く別の流れらしい。メーカーは、付加価値の増加、つまりコンピューターにテレビもDVD録画機能もつけることで、値下げを防いでいるようだ。低価格では利益が減少してしまうからか、狭い日本の室内では数ある家電を一体化するほうが消費者に好まれるからなのか。
 しかし、理由はどちらにせよ、コンピューター機能だけ欲しい者には、余分な機能無しで低価格のほうがありがたい。世界中の消費者の大勢もそうではないかと思うのだが。【楠瀬明子】

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