ドジャー球場でトレイ・ヒルマン・ベンチコーチの講話に耳を傾ける立正大学野球部員。左横は同大学の小山啓太コーチ

ヒルマン・ベンチコーチ(右)から激励を受ける須田凌平捕手(中央)と板倉健人内野手

 立正大学硬式野球部(永田高英部長、坂田精二郎監督、東都大学野球連盟2部所属)は6日から11日の日程で、3年生部員を対象とした海外教育研修をロサンゼルスで実施した。部員は、野球発祥の地でその魅力を再認識するとともに、研修中に学んだ運動機能学や日系史、また肌で感じた国際経験を胸に帰路についた。【文・写真=中村良子】

 教育研修は、同大学法学部のカリキュラムの一環として野球部員を対象に昨年から実施。現地の受け入れは、野球を通じた文化交流の場を提供し、米国とアジア圏の相互理解を深めることを目的とする「Far East Baseball Exchange」(FebEx=マイク・ジン、ジョシュ・モリ両代表)が務め、部員に貴重な異文化体験を提供した。
 モリ代表は、以前日本で生活した経験を踏まえ、「自国を出て他国の生活様式を自分の目で見ることで、視野が広がり多くを学べる」といい、野球に限らず、教育や文化の学習にも力を入れた同大学の研修内容に深い理解を示し、昨年から現地コーディネーターを引き受けている。
 参加者のほとんどが初来米という一行は、アメリカチームとの練習試合をはじめ、全米日系人博物館やゴー・フォー・ブロークを訪れ日系史を学ぶとともに、南カリフォルニア大学(USC)で授業を聴講した。

MLBアーバン・ユース・アカデミーでカリフォルニア地区大学生チームとの試合に先発した関根博人投手

 将来は高校野球のコーチを目指す学生コーチの今津慎之介さんは、USCで聴講した運動機能学が勉強になったといい、「どうしたらケガを未然に防げるか、また体に負担をかけないストレッチや運動の仕方などを学ぶことができ、さっそく取り入れていきたい」と意欲的に話した。
 一行はドジャー球場も訪れた。グラウンドに下り立った部員は、そのスケールの大きさや手入れの行き届いた天然芝などに感動。かつて日本ハムで5年間監督を務めた親日家トレイ・ヒルマン・ベンチコーチが試合前の貴重な時間を割いて日米野球の違いや日本人選手の野球に対する敬意をたたえるとともに、同じ野球人として部員を激励した。
 山之内諒外野手は、「自分は体が小さいので、ヒルマンさんの『体の大きさは関係ない。日々のトレーニングの積み重ねで上達できる』という言葉に励まされた」と振り返った。
 またこの日はドジャース元投手の野茂英雄氏が始球式を務め、部員はメジャーのマウンドから投じられる生のトルネード投法に感激した。
 須田凌平捕手は、球場の一体感に感動。アメリカチームとの試合では、出塁した際に一塁手から「Nice batting」と声をかけられたといい、「アメリカ人選手のフレンドリーさは日本も取り入れた方がいいと思った」と話した。

異国で刺激受け大きく成長
研修生かしリーグ戦に挑む

追加点を入れナインから祝福を受ける丹野翔太内野手

 東都大学野球連盟2部に属する立正大学は、研修で学んだ成果を生かし、9月から始まる秋季リーグで一部昇格を目指し全力で戦う。
 チームリーダーとして一行をまとめてきた板倉健人内野手は約1週間の研修を振り返り、「チームメイトとアメリカで一緒に過ごし、絆がさらに深まった。アメリカ人選手の体格やパワーの違いには驚いたが、技術面では確かな手応えを感じた。帰国後は、アメリカで学んだすべてを最大限に生かして、秋のリーグ戦に挑みたい」と力強く抱負を述べた。
 米国公認医療従事者で大リーグトレーナーも務めた同大学の小山啓太コーチは、「内向き志向の強い学生たちの背中を押して異国に降り立つことの必要性と、成果の大きさをあらためて感じた」と振り返った。また学生が目を輝かせ多くを吸収している姿を目にし、「環境が変わること、刺激を受けることが、若者を大きく伸ばすのだと再認識した。今後もUSCやドジャースなどとの交流を通じ、国際人育成教育をさらに発展させていきたい」とした。
 FebExのジン代表は、野球からリーダシップスキルを学んだ自身の経験に触れ、「若い彼らには大きな可能性がある。このプログラムを通じ彼らにさまざまなチャンスを与えることが、自分にとって野球への恩返しになる」と、引き続き同研修を全面的に支援していきたいと話した。
 同団体は、日本のみならずアジア圏と米国の野球少年の文化、教育、スポーツ交流を目的としており、コンプトンのMLBアーバン・ユース・アカデミーらと事業実施へ向けた詳細を話し合っている。
 
日系史を学んだ後、ゴー・フォー・ブローク・モニュメント前で記念撮影に納まる野球部員

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