頭の隅のほうでずっと気にしていたのだが、払い込みが明白だったので、タックスリターンの締め切り日(今年は4月18日だった)の2日前になって、やっと1040フォームの記入を終えた。
 税金と死からは逃れられないことを身に染みて感じているせいか、追加税の支払いを済ませると、気持ちがゆったり和むから不思議だ。納税が済んでホッとするくらいだから、死んだらもっとホッとするのかもしれない、と思ったりもする。
 毎年、この時節に話題となるのが、「タックス・フリーダム・デー(TFD)」。1年のうち何日働いたら納税分を稼いだことになり、計算上はその日以降の稼ぎ分から自由に使えるようになる、という月日だ。
 全米的にみた今年のTFDは4月24日だった。しかし、納税のためにまだ働き続けている州もある。例えば、個人の平均所得が多く、地方税率も高いコネティカット州のTFDは5月21日だし、ニュージャージー州は5月12日、ニューヨーク州は5月11日、マサチューセッツ州のそれは5月5日だ。
 反対に、TFDが最も早かったのはミシシッピ州の4月5日、次いでテネシー州(同6日)、ルイジアナ州(同7日)、サウスダコタ州とアラバマ州(同8日)、ニューメキシコ州(同9日)の順。
 カリフォルニア州はどうかというと、今年はミネソタ州とともに全州で5番目に遅かった4月30日。ちょうど4カ月間、1年の三分の一を納税のために働いていたことになる。
 こう考えると、私たちはすでに目一杯、税金を納めていると思う。それでもなお、政治家たちは常に増税しようとしているから、TFDが過ぎたからといって、安心してはいられない。
 いっそのこと、いま話題のタックスヘイブン(租税回避地)に銀行口座でも開けばいいのだろうが、財産といっても「パナマ文書」に載る人たちの数億分の一どころか、ローンの支払いなどに追われて借金のほうが多い身ではまったく問題外なのだ。
 タックスヘイブンはその語感から、合法的に納税を回避できる天国のようなところと錯覚する人も多い。そのへんに、税金と死はやはり切り離せない関係との潜在意識があるようだ。【石原 嵩】

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