目の前のライフルに、思わずたじろいだ。人の命を一瞬にして奪う殺傷能力のある凶器を前に、たとえ弾丸が込められていなくても恐ろしさで身がすくんだ。
 これは以前、ロサンゼルス市が行っている銃回収キャンペーンを取材した時、実際に本物の銃を見た時の体験だ。銃による犯罪率が急上昇しているLA市では数年前から銃犯罪や誤射の防止対策の一環で、ロサンゼルス市警察(LAPD)と共同で銃の回収キャンペーンを実施している。趣旨に賛同した地元のスーパーマーケットの協力もあり、銃を持参した市民には銃と引き換えに買い物券が手渡される。
 その時目にしたのが過去に回収された拳銃やライフル、ショットガンの数々だ。もちろん弾は入っていない。しかしテーブルに並べられた凶器からはその脅威がひしひしと伝わってきた。
 銃乱射事件の現場では、こうした銃を犯人が突如振りかざし、乱射をはじめる。その恐怖は計り知れない。
 先日発生したフロリダ州オーランドの銃乱射事件では49人が犠牲となり、米史上最悪の無差別乱射事件となった。昨年12月にはサンバナディーノで14人が犠牲となる銃乱射事件が起きたばかりだ。
 米国は日本と違い銃の所有が認められている。どちらの事件でも犯人は合法的に銃を入手していた。オバマ大統領は一連の事件を受け、殺傷能力が高い銃の販売を禁じるよう、銃規制強化をあらためて呼び掛けた。
 しかし、米国では銃犯罪が起きると、銃の売り上げが伸びる現象が起きる。背景には、事件後は必ず銃規制強化が訴えられるため、駆け込み需要が増えるからだそうだ。
 これまでにも銃で多くの人が命を落としてきたにもかかわらず、依然簡単に銃を入手できることに疑問をなげかけずにはいられない。身を守る手段は銃でなくてもほかにあるはずだ。
 昨年の全米の銃による死者は1万3286人。銃乱射事件は372件発生し、475人が死亡した。過去10年間の銃による死者は30万1797人。こうした数字が銃規制強化の重要性を物語っているのではないだろうか。【吉田純子】

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