テキサスからルイジアナにかけて、大型ハリケーン「ハービー」が上陸、猛威を振るっている。上陸の3、4日前から警報は出ていたが、降雨量が並ではない。ヒューストンの街全体が冠水状態で避難や救助が追いつかない。
 東北の大地震にしても、ハービーにしても、自然の猛威の前に、人間に出来ることは、防御と避難だけ。ハリケーンのエネルギーを消すことも、進路を変えることも出来ない。到底人為の及ぶところではない。
 それに比べれば北朝鮮のミサイルの無謀な発射は人間が自分たちが生息するこの小さな星を自らの手で破壊しようとする愚かな行為でしかない。これに対してはトランプ式の「眼には眼を、歯には歯を」ではなく、出来れば経済制裁、つまり兵糧攻めか外交ルートでの話し合いで解決してもらいたい。戦争になればまた、関わりの無い多くの人間が被害者にならねばならないから。
 ハリケーン「ハービー」の被災地に対して、ご近所のメキシコが援助を申し出ているという。国境に高い塀をめぐらして不法移民の入国を阻止し、その費用はメキシコに支払わせるという公約を守るために、同国に再三費用を請求し、その度に断られているトランプ氏、この申し出をどのように受け止めるのだろうか。案外すんなり受け入れて、被災地援助と塀の建設費用をすり替えて、「私の公約どおりメキシコは金を出したではないか」とビジネスマンの本領を発揮して嘯(うそぶ)くかもしれない。
 隣人の人道的な好意を個人の政策に利用するような汚い行為は米国を代表する大統領としてするべきではないし、そこまではやらないかもしれないが、人間、信じられないというのは悲しいもので、ついつい勘繰りたくなる。
 否定し続けているロシアとのつながりがきな臭くなってくる今のトランプ氏にとって、北朝鮮のミサイル問題も、ハリケーンの被災者救援対策も、格好の隠れみの、追求をかわし、話題を逸らす好材料とみるのは意地悪すぎるだろうか。
 この頃、政治の話は腹立たしくて、つじつまの合わないことが多すぎる。今はただ、ハリケーン被災地の復興と被災者の安全を祈りたい。【川口加代子】

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