米国内には歴代大統領記念館が13ある。4月初旬、その一つ、ボストンにあるJ・F・ケネディ大統領図書館・博物館を訪ねた。
 ボストン市内南方から5マイル離れたコロンビア・ポイントにある白亜の巨大な建物だ。青天井のパビリオンからはボストン湾の初春の海が一望に見渡せる。
 建築家は中国・広東生まれのI・M・ペイ(貝聿銘)氏だ。ペイ氏は今や世界的な建築家でルーブル美術館のガラスのピラミッドや滋賀県信楽のMIHO美術館などをデザインしている。当時はまだあまり知られていなかった。が、ジャクリン・ケネディ夫人が彼の想像力あふれる作風が気に入り、白羽の矢を立てたそうだ。
 スミソニアン博物館などもそうだが、アメリカの博物館の展示技術には常に驚く。ケネディ大統領博物館もそうだが、60年の大統領選挙の際にケネディ候補が遊説した全米各地の商店街や選挙事務所がそのまま再現されており、まさに60年代の典型的なアメリカ人の生きざまが蘇ってくる。
 アメリカで最初に行われた大統領候補者同士のテレビ討論会は、当時の会場がそのまま再現され、ケネディ氏とリチャード・ニクソン氏の「世紀の討論会」の様子を居ながらにして見ることが出来る。そのほか、宇宙船カプセル、平和部隊、ベトナム戦争、キューバ危機、そしてダラスでの悲劇的な死などが昨日のことのようによみがえってくる。激動するケネディ時代が高画質の大画面と対話型ディスプレイで満喫できた。
 79年開館以来、世界中から600万人が来館している。ガイドしてくれた中年男性のAさんはもちろん、民主党支持者だ。
 「トランプ政権になってから訪れる人はその前より増えていますね。昨秋以降目立って増えています」と言う。
 「夢と希望を与えてくれたケネディ大統領に対するノスタルジアですかね」と尋ねると、Aさんはそれには答えず、片目をつぶって見せた。【高濱 賛】

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