仕事関連の顧客だった常に明るいTさんが、いったん日本へ引き上げるということで、ロサンゼルス国際空港(LAX)まで送迎した。数日後、確認の連絡をすると、返事の内容にがくぜんとした。
 無事帰国できたものの、離陸前LAXで盗難被害に遭ったというのだ。パスポート以外の携帯、財布、クレジットカード、子供からもらった大切な栞(しおり)など全てを紛失。約7千ドルの現金も! 自分も以前ジムで財布を紛失し、奇跡的に数年後発見した際には、現金が見事に抜かれていた。銀行強盗はほぼ内部の仕業…悪い予感が脳裏をよぎった。
 「いや~参りました」と無理にでもポジティブになろうとするも、動揺した彼の姿が浮かび心が痛んだ。自分に妙な責任感と正義感が湧いた。
 詳細を聞くと、TSA(運輸保安庁)で、ベルトの金属部分が原因で再検査後、手荷物の黒いバックパックが見当たらなくなり、近くの職員に聞いても誰も分からず、空港警察に事情を説明し一緒に探すもらちがあかず、フライト時刻が迫り出発、帰国したとのこと。
 Tさんから紛失届事務局の連絡先をもらい、早速電話するが、誰も出る気配なし。オンラインのリンク先もつながらない。官庁系にありがちなたらい回しで、このまま迷宮入りかと絶望感が募る。知り合いの某航空会社の地上勤務職員に相談すると、空港に紛失届事務局は存在せず、全てオンラインでと。振り出しに戻るの挫折感。
 ダメモトで、再度オンラインのリンク先を別のブラウザーで試すとようやくつながり、紛失物を英語で書き込み送信。90日間で期限が切れる。
 するとその2日後に事務職から「ありました」との連絡が! Tさんに吉報を伝え、委任状を持参し、翌日無事黒色のバックパックの確保に成功! 現金は小切手で直接本人に数週間後送られる規則とのこと。とにかく日本に荷物を送り届けた。
 一時TSAを疑った自分を猛反省。アメリカの正義も見捨てたものではない。Tさんからはお礼として最近話題の便利で素敵な拡大鏡を頂いた。感謝感激。バックパックと一緒に写った子供たちの笑顔の写真も同封された。久しぶりに報われた気持ちになった。【長土居政史】

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