新型コロナウイルスの感染がロサンゼルスで本格的に広がりを見せる矢先に行われたイベントには約50人が集まった。
尾藤さんは昨年5月に初めて当地を訪れ 、パイオニア川柳や浪漫川柳代表の石口玲さんの尽力でセミナーを開催。南加の川柳愛好家と交流が深まり今回のイベントにつながった。
川柳は俳句と同じ「17音定型」。季語や切字を要する俳句とは異なり、約束ごとは575のリズムのみ。尾藤さんは「俳句は風景や四季を通して遠くの方に人間を見る。川柳は直接人間を見る。江戸の川柳は社会を、現代の川柳は人間を描く」と述べ、初代川柳の残した「孝行のしたい時分に親はなし」を例に挙げて解説した。
「アメリカ」を課題に集まった88句の中からグランプリに選ばれたローペス・フミコさんは「受賞はいい励みになる。 天国の父と母に報告するつもり。よくやったとほめてくれると思う」と受賞の喜びを語った。
すべての賞の発表の後、尾藤さんは次のように総評した。「在米の人には思いがあり、それが生かされて句になっている。技巧にとらわれ過ぎていないところが良い。川柳には遊びの部分もあるが、私としては文化の部分をこちらの人に伝えたいと思っている。俳句と違い川柳の世界は入りやすい。一方で、常に成長する自分を句にするという点では、川柳はとても奥深いものと言える」
同会共同代表の鶴亀彰さんは「川柳が集まるか心配していたがたくさんの応募がありホッとした」と笑顔で語り、来年もまた川柳家元を招き第2回目を開催したいと期待を寄せた。【麻生美重、写真も】
第一回ロサンゼルス川柳グランプリ
第16代家元選 優秀作品14句
▽グランプリ
市民権取っても青い目にならず ローペス・フミコ
▽優秀賞
英訳で初めて理解する歌舞伎 ウノ真理
アメリカの孫に戸惑う母の笑み 松林郁子
ちょび髭のラストサムライ雲田逝く 井出半句
▽16代川柳賞
アメリカで生きるつもりの宝くじ 東坪上枝
▽佳作
人生の土俵アメリカ取り直す ロジー
転勤でまさか米国籍を取る 楽浜とんぼ
日米の良いとこを取る在南加(ざいなんか) 高木子猫
ハグをするこれで私もアメリカン 吉信二
アメリカでチャランポランの半世期 勝俣京子
▽チャランポランの会賞
市民権だけど気になる我が祖国 森田のりえ
▽池の本さん選出のかずみん特別賞
二か国の旗に誓いし我が命 石口玲
▽日刊サン賞
のびのびと『らしさ』気にせずマイウエイ ルーシー・グーシー
▽羅府新報賞
ペニーさえ拾うことないキャッシュレス 千日小坊