最近続いたミネソタのニュースが気に掛かる。ジョージ・フロイド氏事件で元警官の有罪判決が下された。そのミネアポリス裁判所から16キロ離れた郊外で警官による黒人男性銃撃死亡(警察は誤射と強調)事件も発生した。
 自分は1984年から87年までセントポールの小さな大学に留学した。ミネアポリスと合わせてツインシティーズ(双子都市)と呼ばれ、3年半ほど過ごした街だ。大雪積もる長く厳しい冬はさすがにこたえたが、湖や樹木の自然や街並みがすてきな、のどかな場所だ。人々も、警官も、バスの運転手も、店員も皆とても親切で温かみを感じた。
 当初は英語が分からず卒業できるのかと苦悩と不安に襲われたが、慣れてくると快適な環境のもと大いに大学生活を謳歌(おうか)し、格別な青春の思い出ばかりである。
 景気も回復し共和党レーガン大統領二期目の強いアメリカが象徴的で、ロサンゼルス五輪開催、アップルコンピューター登場の一方で、クラック・コカインの薬物問題が生じた頃である。
 美化され憧れたミネソタ(=アメリカ)の楽観的イメージを深く刷り込まれていた自分にとって、近年の歴史的な汚点ともいわれる事件で「ミネソタ」神話の信念が崩れてしまい心が痛む。自分の体験したミネソタとはかなりかけ離れて憤慨する。
 さまざまな留学生たちと出会い、確かに貴重な体験をし視野も広がった。しかし、今振り返ると、夢と希望にあふれる理想主義を掲げる若者たちと共に年中寮に住み、ユートピア的に守られたキャンパス内で過ごしたため、外の厳しい現実の世界とは遮断されたわずかな側面に過ぎなかったのだと分析する。
 今でこそ、警官に装着を義務付けたボディーカメラや、誰かがスマホで撮影した映像が真相の証拠になりうる。逆にいえば、それが存在しなかった昔は、警官による一方的な証言のみが取り上げられたり、捏造(ねつぞう)してもみ消しにされた事件など、自分は知らなかっただけで山ほどあったのかもと想像すると恐怖におののく。
 オバマ大統領やカマラ・ハリス副大統領を選んだアメリカである。差別のない、調和のある友好的な社会づくりを心から願う。【長土居政史】磁針

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