生徒と教授による51作品を一堂に紹介した池坊ロサンゼルス支部の花展

 いけばなの池坊ロサンゼルス支部(南谷泉芳支部長)は、秋恒例の花展を11月20、21の両日、日米文化会館のドイザキ・ギャラリーで催した。2年ぶりとなる待望の展示会は生徒の創作意欲をかき立て、支部は活動再開への大きな第一歩を踏み出した。会場には連日、生徒の力作を鑑賞しようとする来場者が絶えず、にぎわいを見せた。
 秋の展示は生徒が稽古の成果を発表する大切な支部展だが、昨年は新型コロナウイルスの影響であきらめざるを得なかった。悔しい思いでバーチャル開催に切り替え、各人が過去の作品の写真を送ってウェブサイト上で3日間公開した。

秋を彩る季節のさまざまな花材を用いた作品が来場者を魅了した

 メンバーの活動はパンデミック以来、思うようにできなかった。各地のコミュニティーセンターが閉鎖されたので教室は開講できず、個別レッスンもままならなかった。Zoomでの指導もあったが、花や葉を切ったりすることはできないため、細かい指導は困難だったという。南谷師は、メンバーにスケジュールを送る際に思いを込め「裏庭などに咲く花や葉を使って生けてほしい」と願った。自分で花店から花材を取りそろえ、自宅に飾った作品を写し、師匠に送る熱心な生徒も多くいた。そのような生徒への返信で南谷師は「役枝の花をもう少し上向きにした方がいい」「水際をすっきりと見せた方がいい」などの技法や、「この色を加えれば、さらに引き立つ」などと全体のバランスを整えて見栄えを良くする指導を施した。生徒は「そうですね。この方が明るくなった」と答え、すぐさま修正して上達に役立てるなど、不便な生活で犠牲を強いられながらも向上心を失うことはなかった。

 今秋からようやく稽古を再開できた一部の生徒は幸運だが、まだ再開できていない生徒もいる。約1年半のブランクがあるため、今展示ではテーマを設けず、池坊のスタイルも指定せず、「楽しんで生けたいものを」と願って出品を呼び掛けた。立花22、生花16、自由花13のそれぞれのスタイルが満遍なくそろい、生徒43点と教授8点の計51点が並んだ。
 会場を彩る花は、秋らしい菊やウメモドキ、ツルウメモドキ、メイプル、マグノリアなどで、季節感が漂う作品が目立った。生徒の多くが家族や友人を伴い来場し、自分の作品を説明するうれしそうな姿が印象的だった。

自然美を巧みに表現したジャネット・アリマさんの作品

 ロングビーチに住むジャネット・アリマさんのいけばな歴は約25年と長く、これまでに3人の師匠から指導を受け、腕を磨いてきた。教授の資格を持つが生徒に教えることはなく、10年ほど前から有村清風師の下で学んでいる。今回の展示で池坊の数あるスタイルの中からクラシカルな立花正風体を選んだのは、「花材が少なくシンプルだが、自然美を表現できるから」と説明する。作品は秋の季節感を出すことを意識し、赤色の菊をメインに左右と後方にレッドベリー、大きく広がるあやめの葉で、バランス良くまとめた。若い緑の葉と枯れかけた黄ばんだ葉を織り交ぜ「自然」を表した。
 アリマさんはパンデミック中に京都の池坊本部がYouTubeで公開したり生配信したりした教材を見て自習したという。「池坊は世界中のたくさんの生徒をつなげてくれた。われわれはとてもラッキーだった」と喜んでいる。地元の他の流派のバーチャル展を鑑賞して刺激を受けたものの、やはり実際の展示と比べて物足りなさは否めなかった。2年ぶりの展示について「パンデミックが始まってから初めて作品を見せることができて、とても感謝している。先生と生徒、鑑賞に訪れる人と顔を合わせることができるのがいい」と、しみじみと語った。作品については「バーチャルにはない、立体感を味わうことができた。いくらテクノロジーが進歩しても実際の展示にはかなわない。今日は自分の目で作品の素材を見ることで、どのように生けたかが伝わってきてよかった」と述べた。

今秋から南谷師に師事した新井初枝さんの力作

 ガーデングローブで暮らす新井初枝さんは日本で2年、渡米後は10年の華道歴を持つ。パンデミックで活動が滞ったため華道を止めそうなになったが、南谷師に誘われ今秋から師事した。 池坊の伝統の基本を守りつつ、「今はこういう生け方をするのよ」と教える南谷師の「モダンで粋な生け方が自分に合っている」と言い、「花材を豊富に使って、いろんな色が使えるようになった」と上達を口にする。今回の作品は自由花を選んだ。展示の開催日に合わせたかのように庭に咲いた鮮やかな黄色の花を中央に配し、緑の長短の葉とアシのような植物をだ円状に曲げて生け、まとめた。久々の出品に対し「自信がなく、なかなかアイデアが浮かばず恥ずかしく思ったが、花材をそろえると生ける気持ちが出てきた。この会場で他の人の作品を見ると、いろんな花器と花材をおもしろく使っていて、勉強になる」と収穫を喜んだ。
 ロングビーチでグループレッスンに参加し、8人ほどの仲間と学んでいる新井さんは、米国人の大胆な発想に圧倒されることも楽しみの一つだと話す。南谷師からは「平面的に生けないで、工夫して前と後の空間をもっと使って立体感を出すように」などと指導を受けている。作品を手直しされると「先生が触ると花の感じが全く変わる」と、感心し敬意を抱く。パンデミックにより一度は挫折感を味わったが、今は「花に触ると楽しくて止められなくなる。ずっとこれからも花に携わっていたい」と、声を弾ませた。
 南谷師は展示を振り返り、予想を超えた来場者の数に驚き、「来場者から『こんな大変なコロナの時期に花展を開いてくれてありがとう。これからも頑張って』などの温かい言葉に励まされ、うれしかった」と述べた。生徒については「本当に久しぶりの展示だったが張り切って、生け込みの時から楽しんでくれた。いけばなは楽しむことが一番なので、それができて良かった」と達成感に満ちた言葉で評価した。中には「生け方を忘れた」と不安げに話す生徒もいたが、花に触れると感覚が呼び起こされ「花ってやっぱりいいね。花から私たちは元気をもらっている」と、喜びを共有したという。
 支部の活動については、来年2月19日に予定する総会に合わせニューヨークから講師を迎えて2日間の講習会を催し、本格的に活動を再開する。

立花、生花、自由花の3スタイルを紹介した

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