テラサキ武道館を拠点に活動し、マセオ・ヘルナンデスさんとウォルト・ニシナカさんが率いるJタウン太鼓クラブによる祝賀演奏

 日系米国人コミュニティーが待望したテラサキ武道館(ライアン・リー館長)が、小東京についに開館した。今後はスポーツのみならず音楽公演や講演会、各種集会など多目的に利用される。構想から苦節28年の歳月をかけて完成した至宝は、日本文化と日系コミュニティーが融合する模範的な場所として、コミュニティーの絆をより強固にする役割を担うことから、早くも次世代にコミュニティーの団結を伝える「日系レガシー」として崇められている。

LTSCはブースを出して活動の周知に努め協力を求めた

 武道館は、低所得者や高齢者、家庭に問題を抱える人など社会的弱者を救うさまざまなプログラムを実施するリトル東京サービスセンター(LTSC、エリック・ナカノ所長)が所有し運営する。総工費3500万ドルは州などの公的補助金に加え日系コミュニティーと企業などからの寄付で集めた。土地はロサンゼルス市と計50年のリース契約を交わし、月1ドルの借地料を支払う。
 小東京にスポーツ施設を建設する大願を成就させた日系コミュニティー。計画は幾度も困難に陥ったが、先人から受け継いだ持ち前の助け合い精神で乗り切った。リー館長は武道館について「単なる建物、単なるジム、単なる施設ではない。コミュニティーを挙げて成し遂げたプロジェクトであることを証明した」と強調する。

 日系1世が作った日本人街「小東京」だったが、第2次大戦後に収容所から帰還した日系人は他地域に分散したため、2世以降の日本人街に対する故郷愛は薄れていった。近年は再開発が奏功し、日系以外の人々が街に繰り出し、にぎわっている。だが、武道館の誕生により、より多くの日系人が小東京に戻ってくることが期待されている。武道館の完成が日系の存在感を示す好機となることは間違いない。

剣道(写真上)と柔道(同下)の熱のこもったデモンストレーション

 武道館は昨年完成したものの新型コロナウイルスの影響で、正式な開館は延期となっていた。11日にようやくグランドオープンを祝い、翌12日に主たる利用者であるコミュニティーのメンバーによるこけら落としが行われた。施設の名の示す武道の実演は柔道、剣道、空手。バレーボールと卓球の試合に加え、フラダンス、ブレイクダンスなど各種パフォーマンスが披露された。そして日系米国人の社会で最も人気のスポーツであるバスケットボールの熱戦が繰り広げられ、イベントを大いに盛り上げた。
 イベントのゲストとして、元レーカーズでバスケットボールの殿堂入りを果たしたジェリー・ウエストさんや、昨夏の東京五輪女子空手形の米国代表、國米櫻さんらを招き、祝賀イベントに花を添えた。
 基調講演を行なったウエストさんは2013年に武道館の建設費集めに協力し、イベントに参加したことがある。さら地だった建設予定地を訪れた時を振り返り「何もなかった場所がこんなに素晴らしい施設になった」と感慨深げに語り、「子どもたちのためにこんなに素晴らしい施設を建てた」と称賛した。バスケをこよなく愛する日系米国人のコミュニティーに向けて自らの生い立ちを話し、家庭の事情により困難な生活を送ったがバスケが人生を変えたと、バスケに対する情熱について熱弁を

日系バスケットボールリーグの少年にサインをするジェリー・ウエストさん(左)

振るった後、「困難な時も下を向かず、ゴールを設定して力を合わせて頑張ってほしい」と、優しく語りかけた。日系人には戦前からバスケットボールのリーグがあり、戦時中の収容所内でもバスケをプレーすることで団結を助けたことから、日系人にとってバスケットボールは特別なスポーツと位置付けられている。
 式典では19年に脳腫瘍で亡くなった故ディーン・マツバヤシさんの功績がたたえられた。LTSCの所長だったマツバヤシさんはリーダーシップを発揮し、ビル・ワタナベさんから託された武道館建設プロジェクトを推進したが、完成を見ずに他界した。父親の松林忠芳・元西本願寺別院輪番は「とても立派な武道館ができた。ディーンも喜んでいると思う。支えてもらったみなさんに感謝したい」と述べた。
 マツバヤシさん他、日系アスレチックユニオンを設立したアキラ・コマイさん、伝説的なバスケットボールコーチのデイブ・ヤナイさんなど、スポーツを通じて日系人コミュニティーに功績を残した人物の名を刻んだ12本のバナーがお披露目された。

開館記念イベントであいさつに立つテラサキ武道館のライアン・リー館長(写真上)と元LTSC所長のビル・ワタナベさん

日系社会の夢実現
ライアン・リー館長

 長年のコミュニティーの夢を実現させたメンバーがこんなに大勢来てくれて言葉が出ないほど感情が高まっている。長期にわたり支援してくれた人々に感謝したい。子どもたちがバスケの試合をし、武道や太鼓、ダンスを披露した。今後はこの多目的施設を活用して、スポーツのサマーキャンプを始め多岐にわたるプログラムを行っていきたい。

28年かけてついに
ビル・ワタナベさん

 武道館の建設に向けジョージさんとサカエさんのアラタニ夫妻に協力を求めた1994年の着想時から28年が経過し、ついに完成した。日系コミュニティーの努力で皆の夢がかない満足している。私の人生の中で最高のハイライトとなる日となり、この祝賀の場にいられることが大変にうれしい。1920〜30年代に生きた日系人は、学校で白人の子どもと遊ぶことが許されず、路上で球技をしたものだが、時代は変わった。これからこの武道館でスポーツやコンサート、コミュニティーの募金活動など、さまざまなイベントが催されることが楽しみだ。

空手で日系社会に貢献
東京五輪代表の國米櫻さん

 武道館には小東京の内外からさまざまな目的で人々が集まり、スポーツにこだわらずとも文化で人と人がつながることができ素晴らしい。今日はいろいろな人たちに関わることの大切さを改めて感じた。

オリンピアンの模範演武を披露する國米櫻さん

 この記念イベントに招待され大変に光栄。コミュニティーの方々と会えてとても楽しかった。今日の私の演技を見て、空手をしたいと思ってもらえればうれしい。これからもこの武道館で、空手の素晴らしさをもっと多くの人々に伝えたいという気持ちになった。(世界大会で転戦する)忙しいスケジュールだが、またここに戻り、皆に会いたいという気持ちが強くなった。
 これからも空手教室などを通じて、日系コミュニティーと小東京、武道館にずっと関わっていきたい。子どもたちには空手に限らず、バスケットでもどんな競技でもいいので、目標を決めて夢を持ってもらいたい。夢を持つ子どもたちを応援したい。
 空手は2024年のパリ五輪では実施されないが、28年のロサンゼルス五輪で復活することに期待している。五輪は子どもたちに夢を与える大きな大会なので、空手が競技種目に再びなることを願っている。そのための第一のステップは、1人でも多くの人に空手を知ってもらうことだと思う。そういう意味で、この武道館は空手の素晴らしさを伝える役割を担っている。

【写真上】少年少女によるバスケットボールのテクニックを競うコンテスト【同下】武道館で活動するリトル東京テーブルテニスのメンバーで、ダブルスを組む日本人ペア

 私の仕事は、競技選手として試合に出て結果を出すこと。空手は私の情熱であり、私の人生であり、私の全て。米国では空手を知らない人がまだ多いので、今日のような機会を通して私のやっている「空手道としての空手(精神性)」と、「スポーツとしての空手(競技性)」を伝えることができればうれしい。

本当に完成した
バスケ少女イトウさん

 小1からバスケを始めて10年になる。地元パサデナの高校と日系リーグでプレーしている。日系リーグはコミュニティーの人々とつながることができる点がいい。新しい武道館は素晴らしい。小さな頃から完成を待っていて、大きくなった今日、コートに立ってプレーできた。武道館が本当に完成し、信じられない気持ちだ。

武道館から世界一へ
少年剣士の山本さん

 ラハーブラに住み、9歳からボイルハイツの小東京剣道場に通って5年がたつ。剣道の面白さは、違う人と対戦したり、他の道場に出稽古に行ったりして上達すること。武道館はきれいでとてもモダン。ここで試合をして腕を磨き、将来の目標の世界一の剣士になりたい。

ホールでは日系のスポーツ史が紹介され、名選手のジャージや用具が展示されてい
大きな功績を残した日系人のスポーツ選手とコーチに加え、日系のスポーツリーグの貢献者をたたた各人のバナーが披露された
4世バスケットボールリーグの試合

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