ロサンゼルス郡高等裁判所のアーネスト・ヒロシゲ判事(手前)の立ち会いの下、任務の全うを誓い就任する竹花晴夫会頭(左端)ら今年度の役

 南加日系商工会議所(南加日商)は今年度の新役員就任式と功労者表彰ランチョンを1月29日、アルハンブラのゴルフ場内にある宴会場「アルマンサーコート」で催した。2期目続投の竹花晴夫会頭は、コロナ禍の打撃から回復途上にある日系社会の活性化を図ることを誓った。功労表彰ではマーク・ナカガワ牧師とトーレンス姉妹都市協会(TSCA)を表彰した。
 まず物故会員と1月15日にモントレーパークのダンススタジオで起きた銃乱射事件の犠牲者に黙とうをささげた。乱射事件の現場は会場から2マイルほどの近さにあり、出席者は平和な近隣コミュニティーでの突然の惨劇に心を痛めた様子で、犠牲者の冥福を祈った。

就任のあいさつに立つ竹花晴夫会頭

 就任式では役員の名が1人ずつ呼ばれ、全員が登壇して宣誓式に臨み、ロサンゼルス郡高等裁判所のアーネスト・ヒロシゲ判事の立ち会いで任務の遂行を誓った。竹花会頭以下、16人が正式に就任すると、出席者130人が日系社会の期待を込めた大きな拍手を送り、新役員の門出を祝った。
 竹花会頭があいさつに立ち、世界情勢を皮切りに米国とロサンゼルス市の現状と問題点を列挙した。新型コロナのパンデミックやロシアのウクライナ侵攻によりさまざまな分野で世界的に物不足が生じ、農産業や市民の生活に影響を及ぼす干ばつが拍車をかけ、さらにインフレが追い討ちをかけているとし、「人々の生活は厳しくなってきている」と指摘した。一方の米国内については、「分断が進み、人種や政治のみならず経済格差が広がっている。ロサンゼルスでは、犯罪、ホームレス、落書きなど問題が山積しており、人々はこれらがいつ解決できるかと心配しているので、カレン・バス市長は選挙で公約したように解決に努めてほしい」と願った。
 日系コミュニティーに関しては、コロナ禍による衰退を「多少とも回復しているように見える一方で、活動が止まっている団体がある」と憂い、昨年は幾多の年中行事が中止や規模縮小など、中途半端に終わったことを嘆いた。また、コロナ禍で対面での活動ができない間に幾つかの団体でメンバーの減少が見られたと言い、「人々が日系コミュニティーから離れつつある。その対策に何をしなければならないか、皆で考えなければならない。私の考えは、とにかく日系社会の各組織は今までやってきたイベントや活動を延期することなく進めなければいけないと思う。コミュニティーが動けば、人は戻ってくる。そのように南加日商は、昨年初めからすでに活動を進めている」と、力を込めた。

デイビッド・イケガミさんの音頭で乾杯する(左から)竹花晴夫会頭、曽根健孝総領事、アーネスト・ヒロシゲ判事と北垣戸和恵・南加県人会協議会会長

 南加日商は昨年、元日に小東京で大規模な正月祝賀イベントを開き、その後は役員就任式、叙勲祝賀会、ゴルフトーナメント、総領事と首席領事の着任歓迎会を開くなど盛んに活動を行った。竹花会長は南加日商が他団体に先駆けて次々にイベントを再開させたことに胸を張り「われわれはコミュニティーの先頭に立ち、今年は全ての行事をこなし、皆さんと共に日系社会を力強く活発に、そして繁栄に導いていこう」と、協力を呼びかけた。

 来賓の曽根健孝総領事と、北垣戸和恵・南加県人会協議会会長は祝辞で新役員の前途を祝すとともに、南加日商が担う日系社会におけるリーダーシップと、会のさらなる発展に期待を寄せまた、表彰者をたたえた。
 総領事は両受賞者が共に総領事館と協業しているとし、「日米関係に大いに貢献している」ことを強調した。ナカガワ氏については、総領事館が2020年10月に立ち上げた「Japan&Blackイニシアチブ」でナカガワ氏が両者を取り持ち、当地のアフリカ系コミュニティーと日系人・日本人のコミュニティーが互いの理解と関係を深めるプログラムでの尽力を称賛した。トーレンス姉妹都市協会については、千葉県柏市との姉妹都市提携においてさまざまなレベルで相互に訪問し合い人的交流を行っていることをたたえた。
 リトル東京ビジネス協会のデイビッド・イケガミ会長の発声で乾杯し、出席者は和気あいあいと食事を楽しんだ。

表彰を受け謝辞を述べる日系スピリット賞のマーク・ナカガワ牧師

 表彰式は日系スピリット賞のマーク・ナカガワ牧師と、コミュニティー団体賞を受けたTSCAのダナ・ダンラップ会長が登壇し、さらなる社会貢献に使命感を燃やした。
 ナカガワ牧師はセンテナリー・ユナイテッド・メソジスト教会(UMC)で要職を務める傍ら、日系コミュニティーの諸団体に属し、奉仕に励んでいる。リトル東京サービスセンターが建設したテラサキ武道館のプロジェクトに委員の一員として参画し、二世週財団では理事長を務め、11年と12年には同祭実行委員長として祭りを成功に導いた。総領事館がBlack UMCの支援を得て「Japan&Blackイニシアチブ」を立ち上げた際に顧問を務めた。
 控えめな性格のナガカワ牧師が「この賞を受賞するのに値する人物なのかと自問した」と話すと、参加者は「もちろん値する」といった表情でうなずいた。自身が関わる総領事館や二世週祭、JBA、オーロラ日本語奨学基金などの名を挙げ、それらの関係者の支援に謝意を表した。最後は日本語で「南加日商は日系社会にとって特別です。また、この受賞は私にとってとても特別です」と締めくくった。

謝辞を述べるコミュニティー団体賞のTSCAのダナ・ダンラップ会長

 TSCAは、柏市との姉妹都市関係を育み今年で提携50周年を迎えた。毎夏、相互に8人の交換学生が日米を行き来し、互いの文化と言語を教え合っている。また、トーレンスからは柏市に最長3年間、英語補助教員を派遣している。TSCAは毎年、日本文化祭を2日間催しトーレンス市民に武道や茶道、日本食などを紹介している。
 ダンラップ会長は日米2都市の50年に及ぶ草の根交流の意義を強調し、「さまざまなプログラムを実施してきたことを、とても誇りに思う」と胸を張った。50周年記念行事を今月18日午後7時から同市のアームストロング劇場で開くと紹介し、「48人の代表団が柏市から訪問する。学生時代にトーレンスを訪れたプログラム参加者らが舞台に立ち、イエール大学を卒業した日本人の落語家が英語で落語を演じる。ぜひ参加してほしい」と呼びかけた。

南加日商が選出した功労者の表彰式。左から曽根健孝総領、TSCAのダナ・ダンラップ会長、マーク・ナカガワ牧師と竹花晴夫会頭

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