羅府新報の新米記者だった25年前、週末に当時のホテルニューオータニでの取材を終えて中華街を通る時、両側の歩道にあふれる人々を眺めながら、小東京もいつかこんな風ににぎわうといいのに、と思いながら帰ったことを最近よく思い出す。その後、小東京には地下鉄の駅やコンドミニアム、武道館などができて開発が進み、あの頃夢見たにぎわいが現実になった。
 今、小東京が若者を引きつける理由の一つは、日本のアニメ人気だろう。当地で「コミコン」などの催しがあった時は特に、好きなアニメキャラクターのコスプレに身を包んだ若者らが集い、アニメ系のショップや紀伊國屋書店はいつも混雑して活気がある。
 日本のアニメ人気は今に始まったことではなく、以前から非日系家庭の子どもが日本語を学ぶきっかけになるなどして、影響力があった。今の子どもたちによると、日本語を話せることはクールらしく、この世代は日本のアニメ人気の恩恵を受けて育っていると強く感じる。
 コロンビアやイタリア出身の友人をはじめ、私の周りでファンが多い日本のアニメは、岸本斉史氏による忍者アクション漫画「ナルト」だ。1999年から2014年にかけて「週刊少年ジャンプ」にて連載され、コミックは72巻で完結。全世界累計発行部数は2億5千万部以上だという。テレビでも02年からアニメが放送された。
 私自身は、親に漫画本は悪影響を及ぼすと言われ読ませてもらえずに育ったのだが、漢字にふりがなが付いた漫画本は絶好の教科書で、わが息子も「ナルト」を全巻読んだ。息子が日本語での会話に難しい言い回しをはさんできた時、尋ねると漫画で知ったと答え、つい先日は漫画に出てきた「ごとく(如く)」の意味を聞かれた。
 そんな、わが家でも人気の「ナルト」だが、先週うれしいニュースが発表された。世界中のファンによる人気キャラクター投票が初めて実施され、1位になったナルトの父「波風ミナト」に焦点を当てた読み切り漫画が制作されることが決まったのだ。この投票には全世界から約460万のオンライン投票が寄せられたという。岸本氏による7年ぶりの新作に期待が高まる。小東京には、ミナトのコスプレをしたファンが増えるかもしれない。(平野真紀)

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