
「日本」をテーマにインディペンデント短編映画を米国で紹介するニューヨーク・ジャパン・シネフェスト(NYJCF)がニューヨーク市内で開催したコロナ後初となる対面での上映会に続き、全米から参加できるオンライン上映を開催している。12日(日)まで。
ニューヨークの「アジアソサエティー」と「マークリエーション」が主催、日本大使館広報文化センター、ショートショート・フィルムフェスティバル&アジア、あいち国際女性映画祭、ボストン日本映画祭、東京インディペンデント映画祭が協力する同映画祭は、今年で12回目を迎える。4年ぶりに「リアル開催を実現し、3日のオープニングナイトにはワシントンの日本大使館広報文化センターとNYJCFが選出した「NYJCF x JICC」、4日はNYJCFが提携する日本映画祭からの推薦作品からなる3プログラムを上映した。
作品は5分〜30分程度の短編作ばかり。6日から始まったオンライン上映でも16作品全てを視聴することができる。
NYJCFはニューヨークを拠点に活動する3人の日本人、鈴木やす(俳優・映画監督)、古川康介(映像作家)、河野洋(イベント・音楽プロデューサー、マークリエーション代表)が2012年に設立。15年以降は、ボストン、ワシントン、ロサンゼルスなどの米国各都市での巡回上映に加え、日本の数々の映画祭とのコラボレーションも行ってきている。20年から新型コロナウイルスの影響を受けオンライン開催してきたが、12年目の本年は全作品を実会場で開催し、さらに6日から12日までオンライン開催というハイブリッドとなっている。
オンライン開催の視聴チケットは15ドル+寄付任意。期間中は全ての映画が見放題となる。ウェブサイト—
http://watch.nyjcf.com
▽出品作品は次の通り。

晴れて成仏/Third Wheel 監督・ケビン・ヘフリン(2023年、4分50秒、コメディ、ドラマ、時代劇、ファンタスティック、スイス) 江戸時代、突然死んでしまった大工の棟梁(とうりょう)五平は、妻の幸と和解するために幽霊となって戻る。幸には自分が見えないことを知った五平は、かつて馬鹿にしていた弟子で超能力を持つ佐吉を頼る。
What To Do To Be Like You 監督・クリス・ルッズ(2022年、5分01秒、コメディ、日本) 海女さんになるため故郷の島に帰ってきた若いナツミ。この地域で一番の海女である師のレイコについて行き、その秘密を探る。
ネッパ/Aufguss 監督・松居大悟(2022年、24分52秒、ドラマ、日本) お客さんには伝えずに迎えた、50年続いたサウナの最終営業日。熱波師でもあるトウジは最後の熱波(ネッパ)に向かう。何も知らない客は…「なんか今日、気合い入ってない?」。サウナ施設の小さな夜。
The Floating World 監督・横田洋(2023年、15分17秒、ドキュメンタリー、日本) 画廊で環境学の課題のヒントを探す女子大生が、浮世絵の19世紀の日本へ瞬間移動。染料に灰を、畑では人ぷんを肥料に、古着はタオルや雑巾に使っていた江戸時代の生活から、日本が施してきた環境保護の知恵を学ぶ。
守破離〜書の道、我が道〜 監督・伊納達也(2023年、12分36秒、ドキュメンタリー、日本/米国) 京都拠点の書家新見知史は美しい文字を書くだけでなく、伝統を重んじながらも書道を通して、自己肯定感を育み、新しい自分を見つけること(守破離)を、自らも無限の可能性を模索しながら、生徒たちに教える。
The Swamp 監督・崎村宙央(2023年、4分55秒、アニメーション、日本) 己の中に沈み込み、苦しみと共に拾ってきた石が、ある瞬間自我を持ち、自分とは違う存在となる。そして自分を救い上げ、想像もしていない場所へ連れていく。生きづらさを抱えつつも創作をしてきた作者の覚書的作品。

二世/Nisei 監督・ダレン・レイ(2023年、21分18秒、ドラマ、アクション、米国) 第2次世界大戦中の日系米国人兄弟の物語。市民権を剥奪され、強制収容された2人は米国への忠誠心を証明するために、日系人部隊、第442連隊戦闘団に志願する。祖国と家族の間で引き裂かれながらも、海外で敵と戦わねばならない。
半透明なふたり/Seen 監督・浜崎慎治(2022年、23分37秒、ドラマ、日本) 鼻が顎の辺りまで垂れ下がった男・龍也は夜のコンビニでバイトをしている。最近、深夜に来店する眼帯の女の子が気になっている。その子が聴いていたヘッドフォンと店内で流れていた曲が偶然にも同じ曲で同じタイミングで流れていて…。
Tokyo Animals 監督・八代利季(2022年、7分58秒、ドラマ、日本) 日々起き得る何気ない人々の東京の生活。スーツを着る男、昼休み、草原でなにか、うつるスマイル、財布を忘れた人、五つのエピソードが関連性を帯びながら奇妙な世界を生み出していく。
COUNT100 監督・玉木宏(2023年、20分00秒、SF、日本) プロボクサーの光輝(林遣都)は、一度はチャンピオンの座にあったものの、手ひどい負けを喫して、彼女からも見放されてしまう。そんなある日、路上で不思議なチラシを渡された光輝は…。
おしらさま 監督・嵯峨孝子秒、(2021年、11分47秒、アニメーション、日本) 娘は大事に世話をしていた馬と愛し合うようになる。それを知り憤った娘の父親は嫌がる馬を無理やり桑の木につるし…。東北の民間信仰に基づく民話。「おしらさま」をサンドアートと馬頭琴の音色で描く。
勝手に死ぬな/Don’t Go 監督・天野大地(2023年、24分46秒、ドラマ、日本) 死んだ人間の記憶の断片を、特殊な装置を使ってのぞき見ることができる世界。海辺の町で交通事故に遭い急逝した父は、なぜか行き先を家族に偽っていた。残された家族は真相を確かめるべく、亡き父の記憶に潜入する。

ミヌとりえ/Minwoo and Rie 監督・全辰隆(2022年、26分19秒、ドラマ、日本) 祖父が残した手紙を携え、韓国の群山という町にやって来た日本人のりえ。ゲストハウスで出会った韓国人の青年ミヌの助けを借りながら、りえは祖父が送ることのできなかった手紙の受取人を探そうとする。そしてりえは日本の統治時代に群山に暮らしていた祖父の秘密を知ってしまう。
今昔カラス/The Old Young Crow 監督・リアム・ロピント(2022年、12分00秒、ミステリー、スリラー、アニメーション、米国) 幼少時代を東京で過ごした主人公メルダドは、当時のスケッチブックを見ながらある墓地で仲良くなった高齢の女性チヨのことを思いだす。彼は出会った翌日突然姿を消したチヨのことを調べ始める。
青と白/Blue and White 監督・西山裕之(2022年、27分22秒、ドキュメンタリー、日本/米国) 最愛の妻を亡くし、その別れの葬儀の日も塩を作り続ける職人の龍介。そんな時でも塩作りに没頭する姿を見た孫娘みどりが、その真意を聞く。この土地でしか作ることのできない塩を作り続け、その歴史を守っていくことが使命だと思っている龍介。塩と対話しながら、古の時代からその味を後世に残そうとしている。そんな龍介の姿を見つめ続ける孫娘のみどり。塩と向き合うことで、亡き妻と一緒にいる感覚となる。
スカビオサ/Scabiosa 監督・髙村剛志(2022年、19分47秒、ドラマ、日本) ハルカはひょんなことからインスタグラマー・ヒナの法事に出ることになった。法事では生前のヒナの思い出が親族から語られる。ハルカはいても立ってもいられずその場から逃げ出す。