
ゴジラ生誕70周年の記念作となる「ゴジラ—1・0(マイナスワン)」は、11月の日本公開時には3週連続1位となり大ヒットを記録。全米公開となった12月1日の週末興行収入は約1100万ドルをはじき出して3位、非英語作品のオープニング興収では「鬼滅の刃」を超えて今年1位となり、日本製作の「ゴジラ」映画で歴代最高記録という快挙を成し遂げた。ファンだけでなく、批評家の評価もかなり高く、今後、その記録は次々と塗り替えられると期待される。

日本の話題を耳にしつつ、懐疑的な目で本作を見た筆者はぶっ飛ばされた。これほど完成度の高い日本産の怪獣映画があっただろうか? 鳴り物入りの邦画を見るたびに俳優の演技に落胆し、予算が少ないから仕方ないと思いつつもお粗末な特撮シーンにうなだれてきた。そんな中、本作は演出も素晴らしく、心に響くせりふもあり、特殊視覚効果もハリウッドの大作に匹敵する出来栄えだった。そして、何よりもテーマ曲の挿入タイミングは完璧だった。
舞台は敗戦直後の日本。戦争の傷から物質的、そして精神的に立ち直ろうとしていた矢先にゴジラが襲う。米国の核実験により巨大化したゴジラに憲法第9条により戦力不保持となった日本がどう戦うのかが描かれる。

特攻隊を作り「国のために命をささげる」という美学と「生きて帰ってほしい」という願いが共存していたあの時代。そのはざまで苦しんできた主人公の心の痛みが存分に描かれているからこそ、劇中の「思えばこの国は命を粗末にし過ぎてきました」というせりふが観客の心に突き刺さる。
ウクライナの侵攻、イスラエル・ガザ戦争のニュースが流れる昨今。気候変動という巨大なモンスターと戦うべき時に、人類は命を粗末にし続けている。本作は怪獣映画でありながら、オリジナルの「ゴジラ」(1954年)のスピリットを踏襲し、濃密な人間ドラマを背景に反戦のメッセージも込めた作品になっていた。
ゴジラ—1・0 終戦直前に特攻隊の任務から逃れるために小笠原諸島の大戸島に不時着した鍋島は、島の伝説とされていた恐竜のような巨大生物「ゴジラ」と遭遇する。戦後、故郷に戻った鍋島は、ゴジラと再び対峙(たいじ)することに…。(はせがわいずみ)

