書籍、音楽、映画など知的創作物には著作権が生じる。一定期間が過ぎ、著作権が消滅した状態は「パブリックドメイン」と定義される。社会全体の共有物と解釈され誰でも自由に使えるのだ。
 初めてミッキーマウスが登場した1928年のアニメ短編作品「蒸気船ウィリー」の著作権が今年2024年1月1日で消滅した。つまり誰もがこのミッキーマウスのキャラクターを複製やシェアできる。個人で楽しんでも、商用目的でも、合法的に使用が可能になった。
 早速、ある映画監督はミッキーマウスを悪役に設定したホラー映画制作を発表。しかしモダン化された現在ミッキーのデザイン著作権がまだ続いているので、監督は「蒸気船ウィリー」で描かれたオリジナルのミッキーマウスに基づくように充分注意すると語った。
 米国における著作権法の歴史だが、独立宣言から14年後の1790年に、連邦法で保護期間14年、さらに更新延長14年と定めた。何度か改正し、1976年、保護期間を75年もしくは著作者死後50年に改正。その後、ミッキーマウスの著作権が切れるのを見越してディズニーが議会に働きかけ、98年に改正法案が通って保護期間を75年から95年、著作者死後70年に延長した(もしくは創作後120年のどちらか短い方)。「ミッキーマウス保護法」と皮肉られたが、今回はもう守り切れなくなったようだ。
 注意点だが、二次的著作物は別途に著作権が新たに発生する。原作を脚色、映画化などして新たな創作性を持つ作品に対してだ。例えば、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の本が1597年に出版され、著作権は消滅。1961年のミュージカル「ウェストサイド・ストーリー」は、舞台をニューヨークに移した脚色版だ。すると別途にこの作品の著作権が発生する、という具合である。
 そもそも多くのディズニー作のアニメも、実はパブリックドメイン原作なのだ。「白雪姫」「ピノキオ」「シンデレラ」「美女と野獣」「ピーターパン」など、古典的童話である。
 良い創造物は、やがては社会において皆で恩恵を受けようという意義だ。著作者は自らの権利を放棄しパブリックドメインにできるルールもある。(長土居政史)

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