日中はまだ気温が華氏85度から90度近くに上がるというのに、家の前の楓(かえで)は9月初めから葉を落としはじめた。その葉が紅葉しているものの、カラカラに乾いているのは今年の降雨量が少なかったためだろう。
勤務先の建物の完成待ちで今夏はずっと自宅勤務だったため、早朝の散歩をやめた分、毎日日の沈む前ごろに歩いて買い物に出かける。自分で持てる範囲で、2、3品でも雨さえ降らねば買いに行く。マーケットまで片道約1マイル。重い野菜やミルクなどの水物は自分で調整しながら下げてくるのだが、足を動かし、筋力を鍛え、などと勝手に理由をつけて出かける。自力で下げられるのは10ポンドまで。重いものはたとえ特売でも諦めねばならない。
シカゴ・カブスの野球場の近くなので、試合観戦に行く人々の群れを避けたり、壊された古い教会の跡地に建ち始めたビルの建築現場を眺めたり、散歩する顔見知りの犬に話しかけたり、そこにはささやかだが自分が暮らす社会とのつながりがある。
先日は交差点を渡っていると前方にある銀行の大きなウインドーに、猫背の老人が写っていた。足元が少し頼りなく、疲れた様子でトボトボ歩いている。信号を渡り終えてウインドーに近づいてハッとした。なんとその老人は自分だったのである。
その猫背のおばあさんが自分だと分かった瞬間、私の背中はシャンと伸び、足に力が入って、大きく深呼吸して歩幅を広げて歩き出した。自分が今より少し若かった頃、よく見かけて手を差し伸べていたシニアを、姿勢や歩き方を意識せずに歩いていた自分に重ねてみて、少なからずショックだった。
年を取るというのはこういうことなのである。お若いですね、などとお世辞を言ってもらって悪い気はしないものの、現実は残酷なもの。今私は、年相応の82歳。そうして気を付けてみると、いすに腰を掛けても幾分前かがみで、腰を落として猫背になっており、情けないことにそれが非常にラクな姿勢であることに気が付いた。
少し手遅れかなという気もするが、YouTubeを開いて猫背を伸ばす体操などを探している。(川口加代子)
