土曜日、小東京の日米文化会館の広場で開かれていたファーマーズマーケットをのぞくと、色とりどりのキノコを扱うベンダーが目に入った。ピンク、白、黄色と、見慣れない食用キノコが並ぶ。小東京のアラメダ街付近で栽培しているというから驚きだ。
キノコは昔から私の「ツボ」の一つである。日本の秋の森では、落ち葉の間からちょこんと顔を出す赤や白のキノコに出会うことがある。その姿のかわいらしさに心がほころぶ一方、「もしかして毒キノコ?」という緊張もつきまとう。
もちろん秋の食卓にも欠かせない食材で、エリンギ、エノキ、椎茸にシメジ、生で食べるボタンマッシュルームは特においしい。余談だが、マリオシリーズの「キノピオ」も好き。キノコは奥深く、世界的にも好まれているモチーフだと思う。
さて、話を小東京のベンダーに戻そう。テーブルには自家栽培キットや、キノコの成分を抽出したグミ状のサプリも並んでいた。エネルギー増進や脳機能のサポートなど、種類によって効用が異なるという。話を聞くうちに好奇心が刺激され、マンゴー味の「マッシュルーム・チューイングキャンディー」を購入した。成分表示を見ると「コルディセップス」とある。冬虫夏草だという。もちろん、口にするのは初めてだ。
冬虫夏草は、虫の体内で冬を過ごし、夏になると草のような姿で地面から顔を出すキノコ。そう聞くとやや背筋が寒くなる。名前は漢方の文脈で生まれたもので、このタイプのキノコの総称(ジャンル)だという。チベットで採れる最も有名な高級品から、アリに寄生して「ゾンビアリ」を作るもの(これもかなり怖い)まで。一方、人工栽培が可能なタイプの冬虫夏草もあり、小東京で育てられたのはおそらくこちらだろう。都会の真ん中でそんな不思議な生命が息づいていることに、なんだか胸が躍る。
「冬は虫、夏は草」。まるで昔話か、SFファンタジーの一場面みたいだ。オレンジ色のキャンディーを口に入れるたび、想像で心が踊る。
ロサンゼルスの秋。ふとした寄り道だったが、まだ知らぬ小さな世界が潜んでいた。(長井智子)
