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小東京の全米日系人博物館(JANM)が「お正月ファミリーフェスティバル」を開催し、にぎわった。館の改修工事に伴い今回は館外での実施。日米文化会館(JACCC)の協力の下、例年以上に地域色の濃い催しとなった。(長井智子、写真も)


餅つきパフォーマンス「新年祝いつき」で大喝采を浴びるこだま太鼓

家族で祝う日本の正月文化

 
 小東京の全米日系人博物館(JANM)が11日、新年恒例の「お正月ファミリーフェスティバル」を開催し、家族連れや観光客でにぎわった。館の改修工事に伴い今回は館外での実施となったが、会場となった日米文化会館(JACCC)の協力の下、例年以上に地域色の濃い催しとなった。(長井智子、写真も)


折り紙相撲を楽しむ家族づれ


 日本の伝統を踏まえて新年を祝う年に一度の恒例行事。JANMパブリックプログラムを担当するジョイ・ヤマグチ部長は「子どもや家族が無料で参加できるさまざまな体験を用意した」と説明する。折り紙や工作、クラフトやフォトブースなど体験型のアクティビティーを主体に、あめ細工職人・一柳忍さんの実演や、芳田訓晴さんの書道実演、ステージでは太鼓や剣道、「コールドトーフ」による即興劇やこだま太鼓の餅つきパフォーマンスなど、日本の正月文化を身近に感じられるプログラムが実施され、会場には終日、笑顔が広がった。


芳田訓晴さんが書いた日本名を受け取り喜ぶ日系の杉田さん一家


 日系3世の杉田・菊枝・ローリさんは4世のめいと、その娘を連れて、初めて来場した。「いつもは私が正月のおせちを作るのだが、今年は忙しくて作れなかった。代わりにこのイベントに誘った」と話す。母が神奈川県小田原、父が山梨にルーツを持つという杉田さんは、日系家族の中に日本文化を息づかせる存在のようだ。書道家・芳田訓晴さんにそれぞれ日本語で名前を書いてもらった杉田さんの家族は、興味津々と芳田さんの筆の運びを眺め、うれしそうに作品を胸に抱いた。

干支の馬にちなんだ工作も人気(写真=マイケル・カルロス)


 今回はいつもと異なる会場での開催という挑戦もあった。「新しい場所でイベントを行うのは学ぶことも多く、正直大変な部分もあった」とヤマグチさんは語る一方、「JACCCが細部まで親身に協力してくれた」と感謝を述べる。その結果、今年は多くのコミュニティーパートナーが参加し、それぞれの形で新年を祝うブースや活動を紹介。JACCC側も展示やミュージアムストアを開放し、相互に来場者を迎える形となったという。来場者は事前登録だけで約2千人に達したが、通りがかりに立ち寄る人の姿も目立った。

 来場者は事前登録だけで約2千人に達したが、通りがかりに立ち寄る人の姿も目立った。

大勢の来場者に囲まれて揮毫が行われる(写真=マイケル・カルロス)


 JANMは現在、本館展示を休館中だが、「JANM・オン・ザ・ゴー」と題した取り組みを通じ、同イベントをはじめとして館外での活動を積極的に展開している。ヤマグチさんは「常設展示は閉まっていても、私たちはとてもアクティブ。新しい空間で祝うことで、これまでJANMに来る機会がなかった人にも届けられる」と前向きに語る。 子どもたちは彫刻家イサム・ノグチがデザインしたノグチプラザ(JACCCプラザ)を縦横無尽に駆け回った。新年を祝うにふさわしい活気と協働の輪が広がった今回のフェスティバルは、JANMが「動き続ける博物館」として地域と共に歩んでいることを印象づけた。

 子どもたちは彫刻家イサム・ノグチがデザインしたノグチプラザ(JACCCプラザ)を縦横無尽に駆け回った。新年を祝うにふさわしい活気と協働の輪が広がった今回のフェスティバルは、JANMが「動き続ける博物館」として地域と共に歩んでいることを印象づけた。

今年の会場、イサム・ノグチが設計したノグチ・プラザを駆け回るこどもたち

伝統と創作が響き合う新年展示

JACCCで生け花と色紙展融合開催


 日米文化会館(JACCC)館内ドイザキギャラリーでは、新年展示として「南加いけばな教授会」の「第9回・新年いけばな展」と、JACCCによる「第21回・色紙(しきし)展」が開催された。色紙展は8年ぶりに復活したもので、生け花展とは初めて同時開催され、来場者の注目を集めた。


 キュラトリアル・マネジャーを務めるジュリー・チューさんは、「この新年展示はJACCCの大切な年中行事。今年は第21回目となる色紙展を、生け花と組み合わせることで、日本文化の伝統と、地域の人々による現代的な創作を並べて紹介することを目指した」と語る。


ドイザキギャラリーで「いけばな教授会」の生け花作品展と、JACCCの色紙展が同時開催された(写真=マイケル・カルロス)


 色紙展は、誰でも参加できる公募形式が特徴だ。昨年12月に募集を開始し、今年は約90点の作品が集まった。テーマは特に設けず、年齢や性別の制限もないため、子どもから高齢者まで幅広い層が参加している。小さな色紙という形式は、専門的な技法を必要とせず、初めての人でも挑戦しやすい点が魅力だ。


 一方、生け花を展示した「いけばな教授会」は、池坊、草月、小原の3流派の教授者陣が参加。何世紀にもわたって受け継がれてきた日本の花の美が、凛とした空間を形づくっている。


 色紙展との併設により、生け花という専門的な芸術と、地域住民による自由な表現を同じ場で紹介することで、「より多くの人に親しみやすい展示にしたかった」とチューさんは説明する。生け花の指導者からは当初驚きの声もあったが、趣旨への理解と協力が得られたという。

お正月フェスティバルとの相乗効果で多くの人が来場した 


 来場者数は例年を上回り、フェスティバルと重なった週末効果もあって会場は終日にぎわいを見せた。再開した色紙展には来年の参加を希望する声も多く寄せられており、手応えを感じているという。

文化会館・MISEで展示販売

陶芸家ヤマカミさん

海と記憶が形になる手仕事


 JACCCのMISEでは新年展示の一環として、ロサンゼルス在住の陶芸家による作品が紹介されている。ジョナサン・ヤマカミさんは日系ブラジル人として育った自身の背景と、海辺の自然から受けた感覚的なインスピレーションを融合させた作品群は、静かな存在感を放っていた。


ブラジル生まれ、ジョナサン・ヤマカミさんと陶芸作品


 作者は母方が福島県、父方が長野県にルーツを持ち、ブラジル・サンパウロで生まれ育った。サンパウロには多くの日系人が暮らしており、「日本的な感性が自然と身近にあった環境だった」という。祖母は手仕事や陶芸にも親しんでいたといい、幼少期から培われた「手でつくる」感覚が、現在の制作にも通じている。


 作品の多くは、ろくろを使わない手びねり(ハンドビルド)によるものだ。貝殻や海の生き物、浜辺で見つけた石、さらには鳥などの動物たちなど、海岸を歩く中で得た形や質感が、器やオブジェとして表現されている。柔らかで有機的なフォルムは、自然の一部をすくい取ったかのようだ。

海を感じさせる作品


 米国ではオレゴン州ユージーンで陶芸を学んだ。もともとはグラフィックデザインを専攻し、現在もデザイナーとして活動している。その経験から培われた視覚的な感覚は、形のバランスや余白の取り方にも反映されている。展示されている陶作品は、主に花を生けるための器として制作されたものだ。生け花や草花と合わせて使うことを想定しており、一部では茶碗などの実用的な器も手がけてきた。昨年は同センターでポップアップ展示を行い、好評を博したことから、今年も招かれる形となった。


 日系の記憶、ブラジルで育った感性、そしてロサンゼルスの海。複数の文化と土地が交差する中で生まれた陶芸作品は、新年展示にさりげない温度と奥行きを添えていた。

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