
暑いこの季節、おもてなしのデザートは杏仁豆腐がいいですよね。見た目も涼しげで冷たくツルンとした口当たりは、国を問わず皆さんに喜んでいただけます。
子どもの頃、母が作ってくれる「寒天」のおやつはごちそうでした。当時は棒寒天を煮溶かしてお砂糖と牛乳を加えるだけだったので「乳奶豆腐」(にゅうないとうふ)と言ってました。
深さのある丸型の器に流し固め、とがった包丁の先で斜め格子状に切れ目を入れて、その上から冷やしたシロップを注ぐと、白い寒天の切り口がきれいにひし形模様に浮かんで、その線と角が涼しげで子ども心に「器の中の美」でしたね。その上に缶詰のミカンをあしらって、壊すのがもったいないなと思いながら取り分けたものでした。
最近は、近所のアジア系のマーケットで売られている「杏仁豆腐ミックス」を利用しています。説明に書かれているより、ミルクの割合を増やして申し訳程度の手作り感を加味してます。ミックスを使うとしてもシロップは作らなくてはなりません。案外これがポイントです。私はたっぷりのシロップで流れるように食べたいので、お砂糖を控えめにしてレモン果汁も入れてスッキリ仕上げます(基本は1カップの水に対して25gのお砂糖、レモン汁大さじ1)。あしらいにはミカン缶と緑のキウイ。缶詰の汁はほとんど入れないか、補助的に入れる程度です。
さてさて、7月初めに息子のお嫁さんからリクエストをいただきました。「娘の2歳の誕生パーティーはチャイニーズフードにするので、デザートにアーモンドジェリー(英語ではこう言う)を作ってくれませんか」。「もちろん! 余るほど作っていきまっせ!」。あちらのご両親もいらっしゃる。楽しみではありませんか。実は、お嫁さんも、嫁の母親も料理があまり得意ではないのです。その分、仕事はバリバリやっておられます。でもこれって、料理好きな私にとっては案外いいんです。私が普通に作ったものでも親子して喜んでパクパク食べてくれて、賞賛さえもらえるのですから。なんとありがたいことでしょう。
今回も母親の方が「エ〜。これマリが作ったの。すごいなあ〜」と申します。「ミックス使えば誰だってできるのよ」。「イヤ〜できない、できない。私は食べる方がいい。アハハ」。息子にとって義母である彼女は私より一回り年下のかわいい人物なのです。その晩お嫁さんからテキストメッセージが来ました。「私の両親はアーモンドジェリーの残りを全部もって帰りましたよ。ありがとう」。では、では、これからもあちらさまの胃袋をつかんで両家の関係向上に役立てるといたしましょう。
さてと、使いきれなかったミックスがまだ2箱残っていましたので、その週の一番暑くなるだろうと予想が出た日に使い切ることにしました。お隣のコニーとマルロ夫婦宅へおすそ分けしましょう。多分、このデザート知らないかも。電話をして昼下がりの午後、器を抱えて訪ねました。
「これはアーモンドジェリーっていうチャイニーズ系のデザートなの」。「見たことないわ、どういうものかしら」。やはり初めての様でした。キッチンテーブルに3人で座り、旦那さまのマルロが「まずは食べてみようよ」と、かいがいしくボウルとスプーンを準備します。お昼が終わったばかりだから軽くでいいわと言いながら、2人ともお代わりをしてました。どうやら気に入ってもらえたようです。しばらく近況報告などしているとコニーが「そうだ! メリーに電話してみようか。サプラ〜ィズ」。メリーは10年前に引っ越していった元お向かいさんです。彼女たちは時々連絡を取り合っているとのことでした。私にとってもメリーは子どもの年齢が近いこともあって、いろいろ思い出はあります。
私の夫がストロークで倒れた時に、お鍋ごとお料理を差し入れしてくれたこともありました。
電話がつながり、コニーが私に変わってくれました。「ハ〜イ」と言いながら3言目ぐらいから、自然に涙が出てしまって、これには自分でも意外でした。アメリカが私の血になりつつあるってことかしら—としみじみ。
おっと、とんでもないところまでたどってしまいましたが、私の「杏仁豆腐」談義でした。
