国勢調査の統計とインタビューをもとにAP通信が行った調査によると、カリフォルニア州のアジア系とヒスパニック(中南米)系の55歳以上の人口が、白人の同世代の増加率に比べ、3倍以上の早さで増えていることが明らかになった。
 高齢者の人口は依然白人がもっとも多い。しかし2000年から10年までの間、55歳以上の人口の増加率は、白人が18%、黒人が34%だったのに対し、アジア系は74%、ヒスパニック系は73%増えたという。
 専門家によると、アジア系とヒスパニック系の高齢者の増加は、移民が高齢化したことと、生活の拠点を確立した移民が本国から両親を呼び寄せるケースが多いことが関係していると分析。またアジア系や一部ヒスパニック系の中には、長生きをする高齢者も多いためという。
 統計によるともっとも増加が著しかったのは、日本人、中国人、ベトナム人、インド人で、ベトナム人の高齢者は、ベトナム戦争後に米国に移住してきた多くの人々が現在高齢化してきており、インドからの高齢者はハイテク産業で働く子どもによって米国に呼び寄せられたケースが多いという。
 ヒスパニック系は第二次世界大戦後に農場労働者として働くために移住した人のほか、70年、80年代にカリフォルニアに移ってきた人々が現在高齢化を迎えている。また日系人と中国人は平均寿命が長いという。
 高齢者保護団体は、高齢化する移民の急速な増加に伴い、それぞれの文化に基づく特別なサービスが今後必要になると強調。さらに経済的にすでに厳しい状況にある人にとっては、一層負担がかかる事態につながっていくと問題視している。
 ベイエリアで高齢者ケアを行うセントロ・ラティーノ・デ・サンフランシスコでエグゼクティブ・ディレクターを務めるグロリア・ボニーラさんは「米国で生まれ育った白人はソーシャルセキュリティーを持ち、良い職に就いて恩典をもらい、資産を築くことができる。しかし移民してきた高齢者の多くは、老後の生活をサポートするための安定した経済基盤を築く機会が少ない」と訴える。
 また厚生省高齢者対策局によると、アジア系とヒスパニック系の人々は、英語力の不足や文化の相違からヘルスケアなどのサービスを受ける機会を逃し、孤立する傾向があるという。
 リトル東京サービスセンターでディレクターを務めるエイミー・フィリップさんは、「数十年前と比べると、高齢者ケアを行う多くの団体が、多種多様な問題を抱える高齢者の要求に応えられるようになってきている。しかし、これだけ高齢者の人口が増えると的確なサービスを提供できるところはまだ少ない」という。
 家族の結びつきが強いとされるアジア系移民の高齢者の多くは、在宅介護サービスもしくは自身の子どもによる介護を受けており、高齢者をナーシングホームに預けることに抵抗がある家庭が多い。またヒスパニック系高齢者の中には、合法的な在留資格を持たない人もいて、こうした人々は生活保護やメディケイドなどの政府補助を受けることができない。
 このようなさまざまな問題が生じていることから、ヘルスケアシステムは、多人種からなる文化と言語の相違への対応が求められている。さらに高齢者はアルツハイマーや認知症などにかかるリスクも高まってくることもあり、増加が顕著なアジア系とヒスパニック系高齢者への対策は今後ますます必要になってくる。  

 

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