自身のテーマ曲だった「上を向いて歩こう」が演奏される中、「1995年の新人王、ヒデオー、ノモー」とアナウンスされ、大歓声を浴び登場。現役時代は表情1つ変えず淡々と投げたが、この日は打って変わって、笑顔でマウンドに向かった。大きく振りかぶり体をひねって打者に背中を向ける独特の投球フォーム「トルネード」を久々に披露。捕手を務めたかつてのチームメートのエリック・カルロス氏のミット目掛けて投げ込み大役を果たした。
始球式前の記者会見で野茂氏は、始球式について「(現役時の)グランドの方が緊張せずに、今日は少し緊張している」と笑顔で答えた。メジャーでの成功については「オマリーさん(当時オーナー)やラソーダさん(当時監督)をはじめスタッフの助けがないと、多分成績は残せなかった気がする。自分がパフォーマンスしやすい環境を作ってくれたおかげ。こういう(始球式)日も作ってもらえた」と感謝に堪えない様子。
大リーグでの一番の思い出は「初登板の時で、やはり夢が叶った1年目が印象に残っている」と振り返った。16の背番号のユニホームに袖を通し「もう一度選手としてやりたい気がする」と、デビュー時の挑戦した気持ちを再び味わったようだった。
ドジャースのベンチコーチ、トレイ・ヒルマン氏は、かつてロイヤルズの監督を務め、野茂氏にとって現役時代最後の監督である。「大人しく、とても控えめで、黙々とハードな練習をこなす選手で、プロ根性を見せつけてくれた」と評した。「日本選手がアメリカでプレーできるのは、ノモの成功がおおきい。今日のノモの始球式は、球団に貢献したふさわしい活躍をしたからだ」とたたえた。
ラソーダ元監督は「投球のみならず、誰もが尊敬する性格がよかった。ジャッキー・ロビンソンが黒人選手のためにメジャーの壁を破ったように日本人のためにそれをしたのはノモだった。ノモのおかげで他の多くの選手が後に続くことができた」と述べた。
この日は「ノモ・ヒデオ・ボブルヘッドデー」と銘打ち、ファン5万人に野茂氏のトルネード投法をかたどったボブルヘッド人形をプレゼントし功績をたたえた。【永田潤、写真も】