ショーン三宅CEO(手前)が松元健医師(奥)の質問に答える
ショーン三宅CEO(手前)が松元健医師(奥)の質問に答える
 初めて開催された「敬老シニアヘルスケア」主催のパブリックミーティングにはおよそ400人が参加した。初めは静かに座って話を聞いていた赤いはち巻きを付けた参加者たち。マイクの不具合でよく聞こえなくなり、また敬老サイドの話ばかりが続いたことで不満が表に出始め、緊張が高まった。【中西奈緒(写真も)、モニエ中地美亜】

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売却の経緯などについて説明するショーン三宅CEO
売却の経緯などについて説明するショーン三宅CEO
 初めにボードメンバーの川口理事長とCEOのショーン三宅氏が、自分たちの家族の話や日系社会への思い、そして今までの売却の経緯を説明し「日系社会の高齢者をサポートしていくというミッションは変わらず、いままでも常に日系社会とコミュニケーションをとってきた」などと強調。参加者は冷めた反応を見せ、「もうその説明は聞きあきた」「どうしてそちらばかり話すのか」「はやく質問をさせてほしい」などという声があがった。

パシフィカ社のタイラー・ベルディク氏(右)、看護ホームの運営を委任するアスペン社のライアン・ケース氏(左)
パシフィカ社のタイラー・ベルディク氏(右)、看護ホームの運営を委任するアスペン社のライアン・ケース氏(左)
 
 
   川口氏、三宅氏とは対照的に、パシフィカ社のタイラー・ベルディク氏、看護ホームの運営を委任するアスペン社のライアン・ケース氏は会場の雰囲気に緊張した面持ちで座っていた。タイラー氏は「スムーズに管理を移行させたい。みなさんの声を聞きたかったので集まってくれて感謝している」と話し、また、ライアン氏は「みなさんとこれから一緒になることを光栄に思う」と伝えると会場からは即座に「まだなっていない!」というブーイングが起きた。「敬老の50年歴史は変えない。今まで20年間100ヵ所で運営してきた経験があるから大丈夫」と話すと会場からは「本当か?」という疑問の声が投げ掛けられた。ライアン氏は「本当だ」と答えた。「ウエストミンスターのベトナム人ホームの時も、変わり目は同じように難しかったが皆で協力して乗り越えることができた。今みなさんは『SAVE KEIRO』というパネルを持っている。私も同じ気持ちで『SAVE KEIRO』をしたい。みなさんの信頼を得て、それを育てていきたい」と伝えると、川口氏や三宅氏の話の時とは違い、会場からはぱちぱちとまばらだが拍手が起きた。

 質疑応答は、敬老側が事前に入口で参加者に質問内容の記入を促し、それをもとに進行された。敬老側の司会者は賛成派と反対派の質問をバランスよくうまくコントロールして選びだしていたようで、それぞれの人たちにマイクの前で質問をしてもらった。

アスペン社のライアン・ケース氏
アスペン社のライアン・ケース氏
 松元健医師や臨床心理士の池田啓子氏からは5年後はどうなるのか、メデティカル・メディケアの適用はどうなるのか、敬老を売らずに今まで通り運営しアスペン社などと連携して運営することはできないのか、アスペンにできることをどうして敬老にはできないのか、他の病院と提携することはできないのかなどと質問があり、三宅氏は「他の病院と契約したら日系社会のための敬老ではなくなる」と話し、アスペン社のライアン氏は「5年間で変わることもあるけれど、大きな影響はなるべく抑える。敬老の高齢者のために今あるものを保ちつつ変える。メデティカル・メディケアを破棄することはない」と答えた。

 長年、敬老でボランティアをしているヘレン・フナイ・エレクソン氏は「5年以内に死んでしまいたい、という入居者の声をよく聞く。家族がここに居なかったり、帰るところがない高齢者のために売却金を使うことはできないのだろうか」と疑問を述べた。

「もういちど初めからやり直そう」と呼びかける入江健二医師
「もういちど初めからやり直そう」と呼びかける入江健二医師
 入江健二医師は、敬老側は日系社会に「売却してもいいのか」という相談をせず、売却することありきで話をもってきたことが大きな誤りであると指摘した。「売ろうとしているのは施設だけではなくて高齢者たちも売ろうとしている。私たちはリンゴでもオレンジでもない。人間なんだ。日本的な『思いやり』を示しているとは思わない。売却をキャンセルしてもういちど初めからやり直そう」と英語と日本語で呼びかけた。日本語で話をしたとき、より大きな拍手と歓声が沸き起こった。

 川口氏は多くの批判が三宅氏に向いていると指摘し「敬老に関するすべての決断はボードメンバーに責任があって、スポークスマンとして私たちはショーンを選んだにすぎない。そのことを強調しておきたい」と話した。また、ジャック・クリハラ氏はヘルスケア市場の変化の観点から、フランク・カワナ氏は前理事長の立場から売却賛成の意見を述べた。
 

前理事長のフランク・カワナ氏
前理事長のフランク・カワナ氏
 フランク・カワナ氏は「私が理事長の時に売却の話が始まった。みなさんに理解してもらいたい。敬老だけでなく他の日系社会もいま変わり目にいて乗り越えていかなくてはならない。今日は敬老がこの場をつくってくれて嬉しい。皆さんからのコメントを聞けるのが楽しみ」と話す一方で、会の終わりに羅府新報社を含む日系メディアの前ではこう答えたー「小東京はもう存在しない。ここは働くところで、もう住むところではない。3世、4世はもう日本のコミュニティーは必要ないだろう。敬老は1世と2世のもので新1世のものではない。彼らに発言をする権利はない」

 会の終盤、フロア席は白熱し「もういい、あなたたちの話はききたくない」という声も響いた。そして「敬老を守る会」のリーダーの1人ジョン・カジ氏が話をしようと前に進み出てて、敬老の広報担当オードリー氏に止められた。「どうかスケジュールにしたがってください」。ジョン氏は「5分だけもらえませんか」と言い、2人はにらみ合いになり、オードリー氏は深いため息をついてマイクを譲った。

 ジョンは「私はここに敬老を代表して来ている一人ひとりを尊敬しています。しかし、今回あなたたちが敬老に対してしていることは信用することができない。住居者やかれらの将来のためにお金を残すべきだ。もし今後、敬老側と日系社会が合意に達することができないのであれば、私たち反対派グループは売却を止めるために、必要であれば法的、政治的手段などなんでもとる予定でいる」と伝えた。

 実際すでにアクションは起こされており、カリフォルニア州下院議員で州議会で高齢者と長期看護委員会の副議長を務めているデビッド・ハドレー氏(66地区)は10月16日付けで州司法長官に手紙を送付、今回の敬老の売却取引を延期できるようにしてもらう内容の書状で、州司法当局がそのロサンゼルスオフィスで公聴会を開くように依頼している。

「敬老を守る会」のリーダーの1人、ジョン・カジ氏(右)とスケジュールを守ってもらおうと彼のスピーチを止めにかかる敬老の広報担当オードリー・イーサン氏
「敬老を守る会」のリーダーの1人、ジョン・カジ氏(右)とスケジュールを守ってもらおうと彼のスピーチを止めにかかる敬老の広報担当オードリー・イーサン氏

 

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