集まったおよそ3000人分の署名をカリフォルニア州司法当局のロサンゼルス・オフィスに提出する「敬老を守る会」のスポークスマンを務めるジョン・カジ氏
集まったおよそ3000人分の署名をカリフォルニア州司法当局のロサンゼルス・オフィスに提出する「敬老を守る会」のスポークスマンを務めるジョン・カジ氏
 「敬老を守る会」のスポークスマン、ジョン・カジ氏は19日(月)の午後3時過ぎ、今までに集まった「敬老」売却に反対するおよそ3000人分の署名をカリフォルニア州司法当局のロサンゼルス・オフィスに提出した。目的は司法長官のカマラ・ハリス氏に敬老の売却を当面延期してもらい、その間に当局に公聴会を開催してもらうことで、今月末までに1万人分の署名を集めることを目標としている。【中西奈緒(写真も)、モニエ中地美亜】

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およそ3000人分の署名が集まった
およそ3000人分の署名が集まった
 珍しく土砂降りの雨になったロサンゼルス・ダウンタウン。「きっといいことがあるにちがいない」と言いながら、「敬老を守る会」のスポークスマンの役割を担うカジ氏は、これまでに集まった2715人分の署名を手にカリフォルニア州司法当局のロサンゼルス・オフィスに向かった。

 カジ氏はこの日の朝、ロサンゼルス・オフィスのウエンディ・ホロウィス副司法長官に事前にEメールを送っていた。ホロウィス氏は敬老がエンザイン社と売却手続きをした際、そして、次のパシフィカ社との手続きの際に一般の人たちから意見を募った時の窓口となった担当者だ。

 Eメールでは署名を今日届けること、ロサンゼルス・オフィスにて敬老売却をめぐる公聴会を開催してほしいことを伝え、その理由として、「『敬老シニアヘルスケア』はこの非営利団体に関わってきた人たち(ステークホルダー)、すなわち居住者、家族、寄付をしてきた人たちに、今まできちんと情報を提供してきていない。さらに、敬老は公聴会を開催する権利の放棄を要求し、それを手に入れ、日本語と英語の両方で売買の取引について十分に公開してこなかった。それらが原因となり、州司法当局が受け付けた意見公募期間にコミュニティーから寄せられる意見が極端に少ない結果となった」とした。また、すでにカリフォルニア州議会で高齢者と長期看護委員会の副議長を務めているデビッド・ハドレー州下院議員(66地区)がカマラ・ハリス司法長官に公聴会の開催を依頼する書状を送っていることも加えて伝えた。

 ハドレー議員が10月16日付けで送った書状には「66地区を代表して敬老4施設がパシフィカ社に売却されることを延期し、ロサンゼルス・オフィスでこの問題に関する公聴会を開いてもらいたい。『敬老シニアヘルスケア』は複数の施設を所有していて、その1つが私の選挙区にある。さまざまな売却の条件によってここで暮らしている高齢者たちが、最終的には施設を出なくてはならない状況になるのではないかと、とても心配している。売却が完了する前に、高齢者たちは自分たちの心配や意見をきちんと表明する機会を与えてもらいたいと望んでいる。他の理由を挙げると『敬老シニアヘルスケア』は非営利団体として運営され、もともと多くの人たちの寄付で建設されて成り立ってきたことから、売却は寄付者の意図に反していて、契約違反であると私は考える」と述べられている。

 今回の敬老の売却をめぐる手続きにはカリフォルニア州司法当局の3つのオフィスが関わっている。今回の署名は以前に公募意見を受け付けたロサンゼルス・オフィスを通じて、非営利団体・慈善事業を企業が買い取るケースなどを専門的に扱っているサンフランシスコ・オフィスのスコット・チャン副司法長官にまず送られ、サクラメント・オフィスのハリス司法長官が最終的な判断を下すことになる。

署名を提出する準備をするジョン・カジ氏
署名を提出する準備をするジョン・カジ氏
 今回の署名提出についてカジ氏は「あくまで最初のステップでしかない。今月末までに、もっとたくさんの署名、目標としては1万人分の署名を達成できると期待している。主な目的は売却を延期させることだ。現時点でのフォーカス(目標、対象)は州司法長官。しかし、2番目のフォーカスは1人ひとりの敬老のボードメンバーだ。日系社会を鼓舞して、それぞれのメンバーにコンタクトすることだ。これは、新しいアプローチの方法といえる。すべてのボードメンバーが今回の売却に賛成であると思っていないからだ。もし何人かのボードメンバーが考えを変えたら、特別理事会を開いて売却を停止する議決の可能性も生まれる。説明会を通して彼らはいま、コミュニティーの多くのステークホルダーたち、居住者、家族、寄付者たちが売却に反対していることを知っている。私たちの意図は日系社会を壊すことではないし、人を傷つけることではない。フォーカスは高齢の住居者たちがきちんとした世話を受けられることだ。私たちは適切なアプローチを続け、日系コミュニティーからの意見を集約させて、エスクロウ手続きをストップさせたい。敬老の説明会でパシフィカ社とアスペン社の代表も日系社会の反応を直接見て、聞いていた。もし自分が買い手側だったら購入を躊躇(ちゅうちょ)するだろう。もし住居者、家族、日系社会との間に問題を抱えていたら、そういう施設を引き継ぎたいと思うだろうか。おそらく彼らもこの取引を続けるかどうか考えていると思う。いずれにせよ、まずは取引を延期させて、司法当局に公聴会を開いてもらって、司法長官にコミュニティーの人たちの声を聞いてもらいたい。今回の売却が日系社会のためになるのかどうかを判断してもらうことが大切だ。一般市民が安全に暮らしていけるかを確かめるのが彼らの役割。こうした行動はもっと早くに行われるべきだった。敬老側は公聴会を開かなくていいように司法当局に依頼をして、当局はそれを許可した。敬老も司法当局も公聴会を開くことがとても大切だと理解する必要がある」と、日系コミュニティーの声が当局に届けられることの重要性をあらためて語った。

 ジョン・カジ氏はガーデナで不動産業を営み、父親は全米日系人博物館の創設者の一人であり、初代理事長のブルース・カジ氏。母親フランシスの父は医者で、日系人病院の創設者のキクオ・タシロ氏。ジョン氏は長年日系社会に深く貢献してきた家族の中で育ち、彼もその思いを引き継いでいる。

 現在、数人の弁護士、会計士、ロサンゼルス市・郡・カリフォルニア州・連邦レベルの政治家たちも関わり、売却の延期と公聴会の開催を目指して動いているという。

 「敬老を守る会」は州司法当局向けとは別に、敬老側に提出する署名も集めている。この目的は敬老の金銭面での情報公開とその説明を求めるもので、現在およそ3千人分の署名が集まり、近く提出される。

 署名は、今まで行われた2回のコミュニティー集会や同会のメンバーが自分のネットワークを使ってコミュニティーセンターや県人会などさまざまな場所で集めたもので、今月末までに1万人の署名を集めることを目標としている。署名はオンラインページ(http://savekeiro.org/)からも可能で、インターネットにアクセスできないが署名を希望している人には「敬老を守る会」の代表の1人、チャールズ井川氏が窓口となって対応している。井川氏の電話番号は562・402・4315。

 カリフォルニア州司法長官ロサンゼルス・オフィスに署名を届け終えたジョン・カジさん(左)

カリフォルニア州司法長官ロサンゼルス・オフィスに署名を届け終えたジョン・カジさん(左)

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