「今日、ともしび文庫の鍬入れ式がありました」と、嬉しそうに友人。
 2月半ばのある日のことだ。「建築許可が2月末で切れるのに建設のメドが立たず、もう諦めそうになりましたが、地元の建築会社が無料で基礎工事をしてくれることが急きょ決まり…」と続けた。
 ともしび文庫は1991年、駐在が終わって帰国する人々の日本語書籍を集めて、5人のボランティアの手でシアトル近郊ベルビューで始まった。当初は、個人のガレージの一角で。続いて、広い庭を持つメンバーの敷地の隅に立つ建物を会場に。
 毎週1回、水曜日には、あちこちから本好きが通ってきた。ひとりで、また親子づれで。日本から来たばかりの人にとっては出会いの場ともなった。その活動が評価され、1997年にはエイボン女性文化センターからエイボングループサポート助成金を受け、本棚増設の資金になった。
 2011年、諸事情により会場が使えなくなり、ともしび文庫は一旦閉まることに。その危機を前に立ち上げられたのが、『ともしび文庫をみんなで続けようプロジェクトチーム』。寄付金箱が備えられ、新しい協力者・会場探しが始まった。
 2万冊を超える本はすべて箱詰めされたが、幸い日系の海運会社が倉庫に預かってくれることになった。「建物を自分たちで工面するのなら、うちの敷地を使ってもよい」というNPO法人も現れた。
 2年後、「校舎の一部を使ってOK」という協力者が登場した。
 こうして、ともしび文庫は2013年秋、建物建設の資金集めを続ける一方、私立学校の一画を会場に、週一度の貸し出しを再開した。現在の登録家族数は500以上。ボランティアも30人を超すという。
 寄付やラメージセールなどでの資金集めも、まだ目標額には達していない。それでも、今回のNPO法人の敷地での鍬入れ式は、恒久施設実現へ向けての本当に大きな前進だ。おめでとう。
 ボランティアたちの熱意と周囲の厚意に支えられ、26年目を迎えたともしび文庫。「新施設で貸し出し開始」と書ける日の遠くないことを心から願っている。ウエブサイトはourlibrarysite.wordpress.com【楠瀬明子】

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