「皆既日食フィーバー」との記事が先月末の本紙に掲載された。99年ぶりに、北米大陸を横断する形で皆既日食が観測できるという。オレゴン州から始まり、サウスカロライナ州に移動する今月21日の皆既日食に向けては、日本からもツアーが多く組まれているようだ。
 といっても実際は、どこに住んでいるかや自然現象への興味の有無などで、関心の程度もさまざまだろう。
 皆既日食が2分41秒と全米一長いのは、ケンタッキー州のホプキンスヴィル。しかし、同じケンタッキー州内に住む長女は、「皆既日食? いつのこと?」とほぼ無関心。幼子2人を抱えて共働きの彼女には、毎日が忙しすぎて日食どころではないのだろう。
 これとは対照的に、1年前から予約しておいたオレゴン州の宿に友人家族と共に向かうのは、シアトル在住の長男だ。日曜日にホテルに入り、月曜日朝の日食後にシアトルに戻る予定。しかし彼には心配があるという。当日の天候ではない。皆既日食観測のために集った人々が観測後いっせいに西海岸の諸都市に向けて移動を開始すれば、帰りのフリーウエーは大渋滞だろうと予測するのだ。
 一方、テネシー州ナッシュビルに住む次男は、「ナッシュビルは皆既日食観測地域の中で唯一の大都市だから、近隣からも注目されて関心は高いよ」と語る。
 サイエンスセンターで働く友人によれば、皆既日食見物にナッシュビルに集まる大観衆への対策として、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)がサイエンスセンターと連係し準備を開始しているという。なるほど、空き地にテントが林立し多量の食料やトイレが必要となれば、地震や大火と同じ非常事態にちがいない。
 さてシアトルでは、皆既日食は無理だが92%の日食が見られるのだという。たまたま市内の航空博物館を訪ねると、「グレート・アメリカン・イクリプス」テーマの下に、ポスター、ピン、観測用メガネなどが売られていた。小学生の時に日本で日食観察した際はガラス板にロウソクの炎でススをつけたことを思い出しながら、私も1ドル95 セントの紙メガネを2枚購入した。
 読者の皆さんの8月21日はどんなものになるのだろうか。【楠瀬明子】

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