1970年から44年間、本紙コラム「仔豚買いに」を執筆されていた山城正雄さんが亡くなった。9月19日。102歳だった。
 日本では聞くこともなかった日系社会のこと、帰米二世、強制収容所のことなどは山城さんのコラムを通して知ることが多かった。数日かけて2004年から14年までの新聞の切り抜きを追悼の思いで読んだ。
 静江夫人の介護に明け暮れた晩年は、料理の話や買い物など日常の人情味あふれる話題が多かったが、初期の作品は硬派な印象で、頑固一徹、正義感が時に顔を出し、テーマも多岐にわたっていた。44年かけて綴られた「仔豚買いに」はそのまま、後世に残る「日系人史」ともいえる内容だと圧倒された。
 説得が難しい慰安婦問題も、山城さんにかかると、「石碑」というこんな詩になっている。

勝ちそうでもない戦争に/慰安婦を作った/在りし日の軍部は/確かに狂っていた/いくら証拠隠滅しても/被害者の親戚が怒るのも/もっともだ

でもねぇー/憎しみを石碑に彫って/外国に飾る人たちは/文化指数が雑で/地を這うほど最低だ

よく考えてください/石碑は芸術品です/内容が美しくなければならない/内容が最低だったら/芸術以前と見なされて/取り上げられないのです/だからあのガラクタは/海に捨てなさい

どこかの国の人たちは/自分の飼っている犬を殺して/今でも食っていると/石碑に彫られると/その国の人たちはいい気はしない/だから/恨みを伝える野仏は/山奥にでも建立しないことだ

隣国だから/宿命的に隣国だから/仲良くした方がいい/両国親善の石碑を建てた方がいい/するとそこに/自然に美が生まれ/自然に愛が生まれ/神も住むようになるから/人間も穏やかになってくる

だからなぁー/江戸の敵を/長崎でわざわざ討ってはあかん/絶対にあかん
  (2/5/2014)
 ご冥福をお祈りします。
【中島千絵】

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