恐らく訪れた人すべてが目を奪われることだろう。全長およそ130メートルの大聖堂の中に一歩足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのは見事なステンドグラスの窓。ゴシック建築の代表と称され、世界遺産にも登録されているパリのノートルダム大聖堂のことだ。
 ノートルダム大聖堂を筆者が初めて訪れたのは5歳か6歳くらいの時だった。しかし今でもその感動は覚えている。薄暗い大聖堂の中でひと際輝くステンドグラスの窓は「バラ窓」と呼ばれ、世界中から訪れる人々を魅了する。
 大聖堂の中はキャンドルの明かりがともり、静寂の中祈りを捧げる人、思いにふける人の姿がある。自国民だけでなく世界中から訪れた人が思い思いの時を過ごす空間でもあるのだと感じた。それが幼心にとても心地よかった。それから家族旅行でパリを訪れる度に足を運び、高校時代の学校の研修旅行にもしっかりスケジュールに組み込まれていた。美しいものを見る時、そこに信仰の違いは関係ないのだと悟った。日本各地の神社仏閣などを観光する海外からの旅行者もそう感じてくれているのだろうと思う。
 現地時間15日に発生した大規模な火災によりノートルダム大聖堂の屋根や尖塔は焼け落ち、大きな被害が出た。幸いにもステンドグラスは無事で大聖堂の正面部分も崩落を免れた。
 現在、修復のための寄付が呼び掛けられ、いち早くフランスの大富豪らが寄付を申し出た。寄付は世界各国から集まり、報道によるとこれまでに8億ユーロ(約1千億円)が集まったという。さらに英国国教会のウェストミンスター寺院も仏カトリック教会に寄付を表明。キリスト教の宗派を超えた支援も行われた。
 しかし高額な寄付を巡り、フランスでは低所得者を救うべきとの反発の声があるほか、寄付で税控除がうけられることから批判もでており、反政権デモが勃発。寄付を表明した大富豪らは税金の優遇措置を受けないと表明する事態にまでなっている。
 フランス革命や戦争も絶え抜き歴史を見守ってきたノートルダム大聖堂。再建には数十年かかるともいわれるが、当の本人は今の騒動をどのように見守っているのだろう。【吉田純子】

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