自分の子供に、できれば就いてほしくない職業がある。それは、ユーチューバーだ。周りのティーンにその魅力を聞くと、「好きなことをして座っているだけでミリオネアになれる」。これに同感のデジタルネイティブ世代は多いと思うが、今月に入り、ユーチューブ・スターによる事件が立て続けに起きており、決してロールモデルと言えないインフルエンサーたちが社会に及ぼす悪影響が気になる。
 コロナ禍で行動規制が続く今月5日、人気ユーチューバーのジェイク・ポール(23)がカラバサスの自宅で大規模パーティーを開催。ほとんどがマスクなしの参加者で、FBIの手入れを受けた。ジェイクの兄は、2017年に青木ヶ原樹海で自殺者の遺体を撮影し、その動画をユーチューブに投稿して世界中から非難を浴びたローガン(25)だ。5日にはまた、双子の人気ユーチューバー、アラン&アレックス・ストークス(23)がアーバインで、動画撮影向けに偽の銀行強盗を2件企てて起訴された。これら兄弟の親の気持ちを考えると、不憫(ふびん)でならない。
 世界で最も有名なユーチューバー、スウェーデン出身のピューディパイ(30)は、登録者数が個人では最多の1億人を超えており、フォーブスが試算した2018年の年収は1550万ドル。ビデオゲームの実況動画が得意で若者を引きつけるが、一方で、黒人差別や反ユダヤ、白人至上主義と受け取れる言動で批判を浴び、番組への広告出稿を中止されたこともあり、謝罪動画を投稿している。ジョークや話題作りで投稿した動画でも、その影響力は莫大だ。小さい子供が悪質な動画を見たら、洗脳されてしまうかもしれない。
 日本の男子中学生の「なりたい職業ランキング」では昨年、ユーチューバーが1位にランクインし、東京の「代々木アニメーション学院」には今年、ユーチューバー科が新設されるというから驚く。同様の調査では、イギリスとアメリカの子供の間でもユーチューバー願望はダントツだった。
 私が今後ユーチューバーの魅力を理解できるかどうかは謎だが、流行りの動画について盛り上がる子供らの話には、積極的に耳を傾けていきたいと思う。【平野真紀】

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