計画では中間看護施設(写真右)が取り壊され、駐車場付き4階建て 多世帯集合住宅が建つ(左イラスト)
 1969年の創設以来、何百人もの日系米国人高齢者を介護してきた敬老引退者ホームの売却を阻止するために、下院代表のマキシン・ウォーターズ議員が臨時委員会のメンバーと一緒に立ちあがったのは2016年1月のことだった。先ごろ発表された施設の改造計画に対して10日、180人以上を集めたボイルハイツ地区協議会土地利用計画委員会(BHNC委員会)のズーム会議に出席して意見を述べたウォーターズ議員は、改めて強く問題点を指摘した。

 ウォーターズ議員は当日に意見を述べた24人の個人の1人として発言した。大多数はさくらガーデンズ(旧敬老引退者ホーム)の改造案に反対していた。
 同施設を経営するパシフィカ・カンパニー代わって建築プランを発表したライリー・ウェッブさんの説明によると、パシフィカ社は、さくらガーデンズの一部である中間看護施設(ICF)を廃止し、4階建ての市場価格に見合った多世帯集合住宅と駐車場に建て替えることを計画している。既存のシニアホームとメモリーケア施設は残るが、それがどれくらいの期間存続するかは不明である。推定60人のICF居住者が強制退去させられると予想される。

敬老4施設の売却で反対側を支持し、集会で意見を述べたウォーターズ議員(写真=マリオ・レイエス、2015年11月)
 ウォーターズ議員は「これは文化の中断に関わる問題だ」と強調した。同議員選出の第43議会地区には、パシフィカが経営するサウスベイのケイアイがある。「私の有権者の多くには敬老引退者ホームを利用した両親や祖父母がいる。この問題が、彼らの家族にどのように影響するかについて、非常に心配している」と話した。
 16年の売却の条件として、パシフィカは少なくとも5年間、さくらガーデンズの日本文化に根ざした生活条件を実質的に変更しないことに同意した。「さくらガーデンズを家と呼ぶ人々にとって、同施設は日本文化を理解し尊重する(介護者の)人々から、日系米国人の高齢者が必要な支援サービス母国語で受けることができる、ユニークな環境を提供する場所だ」と議員は付け加え、「ロサンゼルスでは多くの地域が急速な高級化という変化の影響を受けている。これらの開発により、古くからの住人を追いやり、貴重な文化的ランドマークを排除するという、私たちのコミュニティーを最も傷つける決定が行なわれている」と、建て替え計画の問題点を指摘した。
 ウォーターズ議員は5年前、ジュディ・チュー下院議員とともに、非営利の敬老が運営していた高齢者介護4施設が営利目的のパシフィカに売却されるのを阻止しようとする動きを助け、当時のカマラ・ハリス州司法長官の聴聞会に上訴することに積極的に関与した経緯がある。
 ユナイテッドメソジスト派教会LA地区監督のマーク・ナカガワ牧師は、小東京のセンテナリとボイルハイツのラトリニダードの二つの教会を監督する。同氏の父は2010年から12年まで旧敬老に住んでいたという。「提示された改修案は、パシフィカとカマラ・ハリス司法長官の間で行われた、5年の期間内はこの施設に何も変更がないという合意に違反している。期限は来年2月まで有効である」と指摘し、「パシフィカがICFを段階的に廃止する可能性があるが、そこにはまだ住民がいる。特にこの新型コロナウイルスの大流行の下で少なくとも今後6カ月間は、居住者個人やその家族に深刻な害を及ぼすだろう」と述べ、 「一般住宅の建設が悪いとは言わないが、この計画は退職者、支援を必要とする高齢者、中度要介護と同等の施設を必要とする人々のための住宅としての完全性に違反している」と続けた。ナカガワ牧師は高齢者の人口は増加し続け寿命も延びているので、介助生活はの必要性は非常に高いと述べ、ICFの代わりとして生活支援施設を建設することを提案した。
さくらガーデンズの改造計画の施設の区割り図
 義母がさくらガーデンズに居住しているサンジョイ・データさんは、「パシフィカ社は必要な説明責任を果たしていない。現在の居住者が利用できる日本食の数を減らすことにより、施設の日本人の特権をすでに削減している」と、施設管理に不満を表明した。「ICFがあることの利点は、年齢を重ね病気になった時に、住民が敷地内にあるICFに移動することができるということだ」。データさんはさらに、「まだ敬老だった頃に義母の母がICFを利用した。敬老引退者ホームの存在の意義は、日系米国人コミュニティーの高齢者が居住する場所を持つのを助けることだった」と、施設の本質を思い出させ、「高齢者のケアと一般住宅を混合するというパシフィカ社の計画は奇妙だ」と非難した。
 他にも、トレイシー・イマムラさんは退去を余儀なくされる住民だけでなく、70人の従業員が失業するという事実に注意を喚起した。また、ティム・マナカさんはICFの場所にはかつてはユダヤ人の老人ホームがあったと話すことでBHNC委員会のメンバーに地所の歴史的重要性を思い出させた。「ユダヤ人コミュニティーと、その土地を現在も利用する日系米国人コミュニティーには、長い歴史がある」
 ウォーターズ議員は「私たちは、利潤の追求という動機だけでは、このような重要な決定を支持することはできない」と結論付け、パシフィカ社に対して、「どうか私たちのシニアが彼らの家に住み、彼らの好きな物を食べ、彼らを理解している人々と交流することを許し続けてほしい。もし彼らがあなたの両親だったらどう感じるか?と考えてほしい」と訴えた。
 この建て替え計画の次のステップは、ボイルハイツ地区協議会の全体が、土地利用計画委員会の勧告を聞くことだ。また、計画はロサンゼルス市議会の土地利用計画管理委員会(PLUM)にも提示される。現在のところ、まだ日程は決定されていない。
【エレン・エンドウ、訳=長井智子】
現在のさくらガーデンズの3施設。左から時計回りに認知症専門棟のレガシー・メモリー・ケア、引退者ホームの居住施設と、建て替え対象の中間看護施設ICF

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