自分もそうだが日本人はいつも四季の移り変わりを心に留めその趣を大事にして愛する。日々四季を味わって過ごしながら一年を送っている。季節ごとの風景や風情の変化を楽しんで尊ぶ。その豊かな四季の感覚を古来から歌や詩に詠んで愛でている。
日本人にとって季節感と結びついた大事な物の一つが食べ物だ。食生活では季節ごと、実際は月ごと、に出てくる「旬」の食べ物を特に歓迎して追いかけ食し、食べる喜びと生きる喜びを感じる。日本に戻って住み、季節が巡る中で感じだしたのが「ああ、これなんだ」という、旬を意識した日常の生活感覚だった。
日本の暮らしではやはり季節に応じた旬の新鮮な食べ物の存在が、味覚と共に脳を刺激して特においしいと思うのである。普段でも食事中によく「おいしいな、日本はいいね」とつい口にするのだ。この「旬」の感性と文化が、日本人の食生活の特色で、それが味わいを一層高めているらしい。
日本は食材の種類も豊富で料理法もいろいろある中で、人々は一見同じような物を年中食べているように見えるが、実際は旬の物が月ごと季節ごとに現れ出回ってくる。旬は山の幸にも海の幸にも、つまり野菜にも果物にも魚にも他の物にもある。例えば野菜にしても夏になると新鮮な「夏野菜」がどっと出てくる。季節感が高まり、いいなと思う。他の季節も同じだ。先ず春の野菜から一部を挙げれば菜の花、春キャベツ、そら豆、さやえんどう、新じゃが、新玉ねぎ、春ごぼう、うど、せり、等々。
夏の野菜でいえば、多くて書き切れないが、例えばトマト、ナス、キュウリ、シシトウ、トウガラシ、トウモロコシ、枝豆、オクラ、等々という具合。
次に秋の果物となれば、柿、梨、ざくろ、ぶどう、なつめ、みかん、アケビ、銀杏、栗、等々。季節感が豊かで秋はいいなーと思う。果物ではないが松茸、椎茸、まいたけも秋の風情を増し味覚を刺激する。
あるいは冬の海の幸となればズワイガニ、伊勢海老など海老カニ類、ヤリイカ、スルメイカなどのイカ類、マダコなどのタコ類、魚はニシン、アジ、アンコウ、ブリ、タイ、カマス、マサバ、ヒラメ、サワラ、カレイ、等々となる。
日本人は春夏秋冬の季節季節の気候風土とそれがもたらしてくれる食べ物を恵みとして、味わいながら生きている。【半田俊夫】