さくらガーデンズの空撮。右の建物が中間ケア施設

ボイルハイツ地区近隣協議会(Boyle Heights Neighborhood Council=BHNC)は23日にオンライン会議を開催し、さくらガーデンズ(旧敬老引退者ホーム)の中間ケア施設(Intermediate Care Facility=ICF)の所在地に集合住宅と駐車場を建設するというパシフィカ社の提案に反対を決議した。

会議は10日に行われたBHNCの計画および土地利用委員会(Planning and Land Use Committee=PLUC)の会議を受けて開催された。10日の会議ではパシフィカの代表者がプロジェクトの概要についてプレゼンテーションを行った。それに続きパブリックコメントの時間が設けられたが、ICF入居者の家族をはじめ発言者の全員が委員会のメンバーと同様に、パシフィカの提案に反対していた。
委員会の発言者の中には、マキシン・ウォーターズ議員が含まれていた。同議員の選出区には2016年に敬老がパシフィカに売却した4物件の一つであるケイアイ・サウスベイ・ヘルスケアセンターがある。パシフィカはICFの他に、隣接する旧敬老引退者ホーム、ガーデナのケイアイ、そしてリンカーンハイツの看護ホームを所有している。
委員会のデビッド・シルバス委員長は10日の発言者たちの言葉から「この開発が、これまで長年にわたりボイルハイツの景観の不可欠な部分であった日系米国人コミュニティーに実際にどんな影響を及ぼすのかという大きな問である」という発言を取り出し、「これまでに寄せられた反響と活動に基づいて、PLUCはパシフィカ社のさくらガーデンズ開発を支持しないとし、不支持の承認を得るために近隣協議会に提出するコミュニティー影響声明(community impact statement =CIS)を作成した」と述べた。
理事会によって承認されたその声明は、BHNCに対して「影響声明」をロサンゼルス市の評議会と委員会に提出し、将来においてロサンゼルス建築安全局でケース番号に割り当てられる可能性のある評議会番号に声明が添付するよう要求している。
「パシフィカ社が提出した4万平方フィート50ユニットの集合住宅を敷地内に建設し、同時に48室90床の中間ケア施設を45ユニットの立体駐車場に改修するプロジェクト案に対し、PLUCは、全会一致で反対を決議した」

「PLUCに寄せられた意見によると、パシフィカ社はこのプロジェクトについて、日系米国人コミュニティーとさくらガーデンズの居住者と協議していない。多くのコミュニティーメンバーとPLUCの理事から、プロジェクトは明確さに欠けており全体的なビジョンおよび高齢者の将来の不確実性について深い懸念が表明された」
「他の懸念として、提案された開発がその地域の周辺の駐車場と交通にどのように影響するかが議論された。さらに、コミュニティーとPLUCのメンバーは、さくらガーデンズの現場の完成予想図について懸念した。デザインが美的およびスタイル的に歴史的なボイル街に適切であるとは言えない。また、かつてユダヤ人高齢者住宅であった時代にまでさかのぼる歴史建造物のオーディトリアムとメアリー・ピックフォード・タワー、日本庭園業組合が造園したコイの生息する池なども影響を受けるだろう」
「これらのすべての問題を考慮すると、パシフィカ社の計画を支持しないことが提案されたプロジェクトをサポートしないことがボイルハイツ地区近隣協議会への推奨である」
以上のように述べられた後、パブリックコメントの時間が設けられ、発言者はそれぞれ1分の持ち時間で意見を述べた。

居住者に安らぎを与えるコイが泳ぎ、滝が流れる施設内の池

入江健二医師は「私の患者の数人が現在ICFにいるが、全員が90歳以上、平均年齢は95歳だ」と述べた。「彼らの心は非常に明瞭だ。彼らは中間ケア施設を愛し、幸福に暮らしている。彼らの子供たちももう年をとっているので、自分たちの問題で子供たちや家族を苦しめたくないと心配している。彼らにはICFの外に行く場所がない。また、ICFがあるので生涯を閉じるまでここでケアを受けられるという約束に基づいて、居住している」と続けた。
「ボイルハイツのコミュニティーには100年以上の長い日本人の歴史がある」と池田啓子さん。「施設は50年以上前にユダヤ人の老人ホームを購入したことに始まった。日系米国人の指導者たちは、何世代にもわたって高齢者施設を維持するというビジョンを持っていた。住民は虚弱で、多くは未亡人であり、また、家族を亡くしている人も多い。だが、ICFでは日本語を話すスタッフ、医師、ボランティアが提供する安全で手頃な日本的サービスの恩恵を受けている。それは大きな一つの家族であり、日本文化に属しているという感覚を与えている。この国に何年住んでいても、慣れ親しんだ食べ物を食べて、自分のことを理解している人に自分の言語で話すことほど快適なことはない」
「私の90歳の母は現在ICFに住んでいる」とマイケル・トウジさん。「息子として、私はこのICFを集合住宅に変える計画と現在の居住者の潜在的な移動の可能性について深く懸念している。彼らの多くは私の母と同じように80、90、あるいは100歳以上の人もいる。彼らが移転を余儀なくされた場合、特にパンデミックのこの時期に、感染に対して私たちの中で最も脆弱である人々であることを考えると心配である。ずっと住み続けることができ、ここで残りの日々を生き抜くと思っていた母が、家だと思っている場所から出なければならないかもしれない。それを聞いて母は涙を流した。それを聞く私の心も痛む」
母親がICFにいるナカヤマ・ケンサクさんは、「住民は大変にお年寄りだ。彼らには住民同士の友達のコミュニティーがある。そしてそれをバラバラに壊すことは、ICFに住んでいる年配のコミュニティーに非常に大きな損害を与えるだろう。「年をとるにつれ、嗜好が子供の頃に帰っていく傾向がある。食べ物や音楽など、彼らが楽しんでいるものは、多くの人が日本にいたときに楽しんでいたことで、そこに戻っている。この施設は、彼らがそれら楽しむことができる家を提供している。また、宗教的な活動が日本語で行われていることは、この施設に住む、仏教やキリスト教を信じる人々にとって非常に重要だ。このコミュニティーが崩壊した場合、これらのことが破壊されてしまう」
キャロル・オノさんは「旧敬老引退者ホームは、日本人の高齢者に文化的に敏感で、手頃な価格の移行医療を提供するために設立された」と述べた。「5年近く前に売却されたにもかかわらず、今でも日本のコミュニティーの大切な機関であり続け、大事にされている。現在、ICFの居住者は、一生安全であると確信していた手頃な価格の家を失うリスクにさらされている。パシフィカの計画は、低所得の高齢者を、より裕福な居住者に置き換えることだ。これは、不動産価格をつり上げボイルハイツコミュニティーをさらに高級化しようとするための最初のステップだ。パシフィカが、低所得の居住者を追い出したり、日系アメリカ人コミュニティーや他のコミュニティーの大切な制度、伝統、歴史、文化を消したり破壊したりすることを許されるべきではない」
合同メソジスト教会のロサンゼルス地域教区長であり、同小東京教会の元牧師であるマーク・ナカガワ師もこのプロジェクトに反対した。「ここボイルハイツ地域における文化的感受性と高級化に関する問題について、これまでの発言者全員が、私が言わんとすることを言ってくれた。2週間前のPLUC公聴会で私が言ったことをもう一度繰り返すが、パシフィカの提案は、カマラ・ハリス司法長官との間で締結した、少なくとも5年間は資産の完全性を維持するという合意に違反している」
ラテン系コミュニティーのメンバーは、この問題に関して日系米国人コミュニティーとの連帯を表明し、開発は手頃な価格の住宅の減少を意味する可能性があると指摘した。
公聴会の発言者に同意したBHNCの理事には、ブレンダ・マルティネス、カルロス・モンテス、マルコ・アントニ・オナバロ、ビビアン・エスカランテの各氏が含まれていた。
また、この動議に投票したのは、ホセ・オロスコ・ペリコ会長、デニッセ・ゴリー・マルケス、デビッド・プゴ、ジャネット・ガルシア、デビッド・ロペス、カルロス・セルダン、アルマ・カタロニア、モニカ・タピア、ピーター・ハーガン、ジェニー・オマナの各氏だった。【JKヤマモト、訳=長井智子】

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