大統領就任式を来週に控えるまでとなった。
 いつもであれば、11月の投票日かその翌日くらいに開票結果を知ると、次は1月の就任式まで関心はないのだが、今回はこの間がずいぶんと長く感じられた。初めて知ったことも少なくなかった。
 接戦州での決着がつくまでが長く、テレビの前に座る時間もまた長かった。赤(共和党)と青(民主党)で色分けされたアメリカ地図を毎日どれほど見つめたことか。そのうちに、ニューヨーク州の選挙人団は29人なのにアラスカが3人とは不公平な割合だと思い始めた。そして、選挙人の数は、上院議員数(2人)とその州選出の下院議員数(人口比)を足したものであることを遅まきながら理解した。
 また、郵便投票がいつまで到着すれば有効かなどの諸手続きだけでなく、投票結果に選挙人団が拘束されるか否かさえも各州に任されていること、つまり大統領を選ぶにあたって州が非常に強い独自性を持つことも再認識させられた。
 投票に決着がついた後も選挙の負けを認めない事態となった時は、驚き、あきれるしかなかった。そのため、州ごとの選挙結果認定手続きというものを初めて意識した。
 そして、極め付きが、今月6日に行われた議会による認定だ。大統領選挙結果を上下両院合同会議で正式に認定する儀式的なもの、のはずだった。異議申し立て制度はあるが、すでに「選挙に大掛かりな不正はなかった」と何度も報告されており、数多い申し立ても裁判所により却下されていた。それでもなお、負けを認めない現職大統領の顔色をうかがう議員により、制度が利用された。
 そのテレビ中継中に起きた、現職大統領の扇動による議事堂乱入には、胸がつぶれた。これは完全に犯罪だ。大統領が今もなお「不正な選挙」「盗まれた選挙」と言い続けるのは常軌を逸し危険でしかない。この事態に対処するには、議会による弾劾訴追のほかに、副大統領と閣僚により大統領の職務を停止することのできる憲法修正25条があることを初めて知った。
 投票日から2カ月以上経ってまだ続く、この混乱。
 就任式が無事終わることを願うが、楽観できない現状が残念だ。【楠瀬明子】

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