エミー賞受賞のテレビ司会者ジーニー・マイさんが司会を務め、テレビシリーズ「スタートレック」のヒカル・スールー役で最もよく知られる俳優、作家、そして活動家のジョージ・タケイさんと、MTVシリーズ「ティーン・ウルフ」でキラ・ユキムラ役を演じたアーデン・チョーさんが出演。3人は、エリカ・パン博士に新型コロナワクチンについてさまざまな質問を投げ掛けた。「同じような予防効果というが3種類のワクチンはどこが違うのか」「妊娠への悪影響は?」「J&Jは接種が一時中断したが心配はないか」。率直な質問にパン博士が答えた。
J&Jは安全か?
既往症は? 妊娠は? 変異株は?
マイさんの友人には「既往症があるので怖いから」とワクチンを敬遠する人がいるという。パン博士は、「既往症のある人こそワクチンを打たないと、感染した時に重篤になる危険が高い」と話し、ワクチン接種を強く推奨した。また、メイさんは、「私の友人グループでは少なからぬ人数が妊娠への影響を懸念しているが、問題ないという説もあり、大きな論争になっている。本当のところはどうなのでしょう」と尋ねた。パン博士は、まだ新しいワクチンなので妊娠に関してもデータを収集中だという点を明確にしながら「妊娠に悪影響を及ぼすという根拠は出ていない。間違った情報を打ち消していかねばならない」と述べた。
変異株への心配には、これまで確認されている変異株に対処できることが分かっており、「効き目に差はあってもワクチンを打たないよりははるかに軽く済む」と話した。
ワクチンは毎年しなければならないのか、という質問もよく聞くが、「インフルエンザと同じで変異株に対して強化のブースターショットをすることは必要になってくる可能性は高い」とパン博士。
「ということは、どのワクチンがいいかと今、選り好みをする必要はないということですね」と返したのはチョーさん。ワクチン反対派ではなかったが、3種のどれにしようかと迷ってしまい、友達よりも接種が遅かったと告白した。でも1年以上のパンデミックで最も我慢していたのは友達との時間。最近やっと友達と出掛け、本当に楽しかったと話す。これからも安全に友達や家族と過ごしたい。
「ワクチンを怖がっている人、反対している人は調べたり勉強したりしてワクチンを打ってほしい」と訴えた。
町の再開、集団免疫が鍵に
パン博士は、完全に元の生活に戻るためには集団免疫を獲得する必要があることを説明。それにはまだ時間がかかるが、「でもそれまでのボーナスとして、接種を済ませた人同士、家族の集まりや友人との集まりを再開することができるようになった」ことを強調する。ワクチンを接種することで、子供がおじいちゃんおばあちゃんと1年ぶりにハグできる。「こんなに素敵な気持ちになれることはないですよね」と目を細めた。
ワクチンの有効性について、次々と集まるデータはどれも90%以上の高い有効性を示している。「でも、科学ではなく信念に基づいてワクチンを接種したがらない人がいますね。僕は彼らに、『インドで今起こっていることを見なさい』言うんですが」とタケイさん。状況がコントロール不能になり、感染者数が急増すれば、ベッドや呼吸器が不足し、危険が高まる。ニューヨークやカリフォルニアでも昨年起きたことだが、これはまたいつでも起こり得る。「今日はテストで陰性でも、明日には感染することがあり得る。ワクチン以上に有効な手立てはないんです」と話すパン博士。「インドで今起こっていることを見てもその気にならない人がいるなんてね」とタケイさんは首をかしげた。
ジーニー・マイさんは昨年パンデミックが始まったころは、食料雑貨のすべてにアルコールを吹きかけていた。帰宅したら玄関で服を脱いでシャワーに直行、脱ぎ捨てた服は手袋をした手でつまんで熱湯で洗濯。「あんな騒ぎはもうしたくないですね。ジムや遊園地に行ったりしたい」と回想した。
旅行は安全か?
ワクチンの結果、今では飛行機で旅行ができるようになった。だが、海外旅行も含め航空会社がワクチン接種を条件にすることがあるので「ワクチンの記録を保管することは大事」とパン博士は念を押した。
「僕は旅行についてはフラストレーションがありまして」と訴えるのはタケイさん。タケイさんが制作にかかわり日系人収容所を舞台にしたミュージカルとして話題を集めた「アリージャンス〜忠誠〜」が日本語に翻訳され、3月から4月にかけて東京、名古屋、大阪で日本人俳優により上演されたので、訪日を熱望していた。だが、早々とワクチンを済ませたタケイさんなのに、日本の厳しい水際対策のために訪日を諦めざるを得なかったというのだ。「14日間の自主隔離をしなければならないという。日本側の決定です。14日分のホテル代がいくらになるか考えてみてください」。4月になっても状況は改善せず、日本語公演を見る願いはとうとう叶わなかった。残念がるタケイさんは、「オリンピックがあるのに大丈夫なのか」と心配する。
「日本のワクチン接種率はまだとても低い。これをどう思うか?」と尋ねるタケイさんに、パン医師は「今はインドが最悪で、他にも感染爆発が起こっている国はある。世界中にワクチンが行き渡るにはまだ時間がかかる。私たちは米国にいて、いち早くワクチンを接種できる幸運に恵まれているのだから、その恩恵を受けない手はないですね」とワクチン接種の啓発に力を込めた。
16歳以上のカリフォルニア州民は、移民の状況に関係なく、新型コロナワクチン接種を無料で受ける資格がある。州からの最新のワクチン情報については、ウェブサイト(VaccinateALL58.com)にアクセスして調べることができる。
この座談会はカリフォルニア公衆衛生局のフェイスブックで、英語の字幕付きで見ることができる。
https://www.facebook.com/CAPublicHealth
【長井智子】