【中西奈緒】 知り合いのリポーターが東京オリンピックの取材で来日している。せっかくロサンゼルスから来たのだから少しくらい会いたい、でも会いにくい。そんな葛藤が続いている。
 オリンピックが盛り上がる一方で新型コロナの感染状況は急速に悪化。東京だけでなく各地で過去最多の記録を更新している。
 感染力が強いインド由来のデルタ株のまん延に加えて、ワクチンの供給が滞っていることで、まだ接種できない20代、30代を中心に感染が拡大。医療体制がひっ迫し、なかなか入院できずに自宅で亡くなる人たちもいる。
 異例の無観客で行われている五輪では、選手や関係者、メディアに厳しい行動ルールが課され、外部と接触させない「バブル方式」が取られている。自由に出歩くことはできず、公共交通機関を使うことも観光や買い物、レストランでの飲食も認められていない。
 しかし、随分と早い段階からルールは破られてきた。そもそもルールに無理があって政府や組織委員会、IOCに責任があるともいえるが、出会うはずもない人々と普通に街中や近所のスーパーで出会うととても気まずい。マスクをせずに寿司屋に並んでいる人たち、家電量販店で買い物をしている人たちもいる。
 バブルにたくさん穴が開いているのに、違反者はたいして罰せられることもない。政府は、五輪は安全で感染拡大とは無関係だと言う。大会関係者の感染が相次ぎ、選手村でクラスターも起きているが、想定内であるというような口ぶりだ。
 ロサンゼルスのリポーターから渋谷の若者にインタビューしたいというリクエストがあった。でも、ワクチンを打っていない身としては若い世代との接触はリスクが高い。逆に接種済みの彼女がブレークスルー感染をする可能性だってある。私が協力できることはSNSで情報提供をするなど会わずにできることしかないのだろう。
 会う、会わないで悩んだ五輪はもうすぐ閉幕する。昨日の東京の感染者数は過去最高の5000人を超え、来週には1万人と予想されている。テレビで選手たちの活躍を見るのは、いっときの楽しみ。はっとわれに返ると未知の不安が待ち受けている。

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