
ジャン・ペリー元市議が大きなハサミでリボンをカットした。11日、小東京のテラサキ武道館が正式に開館した。テラサキ武道館は昨年に工事を終えていたが、新型コロナウイルスのパンデミックにより正式な落成式が遅れていた。

中庭で行われたセレモニーは、長らく待たれていた小東京の体育施設完成を記念する、2日にわたるイベントの1日目だ。ロサンゼルス通りについに完成した施設を祝うために、関係諸氏や、鮮やかな緑色のTシャツを着た放課後プログラム「ミ・カーサ」の子どもたちが駆け付けた。司会を務めたテラサキ武道館のライアン・リー館長は「やっとこの時がきた」と述べ、建設に関わった多くの人々の思いを代弁した。
武道館を建設したリトル東京サービスセンター(LTSC)のエリック・ナカノ所長は「テラサキ武道館は若者とシニアの両方が集う場所になるだろう。若者であれば、LTSCの運営する低所得者住宅に居住する青少年も、スキッドロウやロサンゼルスのダウンタウンに住む他の低所得層の青少年も一緒に放課後のプログラムに参加し、勉強をしたり、体を動かしたりする場所となるだろう。また、シニアであれば、2年間自宅に閉じこもっていた高齢者が、ワクチンクリニックでワクチン接種を受けたり、ピンポンやズンバのクラスに参加して体を動かしたりすることができるようになる」と話した。
小東京に体育施設を建設するという夢は20年以上の歳月の中で何度も繰り返され、まるで地域の不屈の精神を物語る伝説のように語られてきた。建設が始まった当時に少年バスケットボールのユニフォームを着ていた子どもたちはもうとうに大きくなっている。テラサキ武道館の実現に動いた多くの人々がすでにこの世を去っている。式典に出席した多くの人々の脳裏には、特に2019年に脳腫瘍で急逝したLTSCのディーン・マツバヤシ前所長のことがよぎり、エリック・ナカノ現所長は「ディーンの代わりに、彼の夢の実現に貢献した皆さんとハイタッチをする」と述べた。

子どもの遊び場は、ロサンゼルス市議在任中に借地権確保に尽力したジャン・ペリー氏の名にちなんで命名されている。同氏は先日、第37選挙区から米合衆国下院に出馬することを表明したばかりである。ペリー氏はあいさつで「この場所は大変に美しく、また、大変に長い時間を要したので、うれしいこと、悲しいこと、楽しかったことなど、さまざまな感傷がよぎる」と述べ、「私たちは長い間待っていたが、その結果は予想を超えた素晴らしさで、それは皆さんも同感だと思う」と気持ちを表した。さらに「その過程で何人かの人を失った。ディーンもその1人だが、ディーンは皆が一つになり、コロナウイルスを乗り越え、武道館が開館し、地域のために機能していることに喜んでいるはずだ」と述べた。
LTSCのビル・ワタナベ元所長は、「体育施設建設のコンセプトは1994年に、大学世代の若者のフォーカスグループから始まった。彼らは『ジムがあれば僕らはもっと小東京に来るだろう』と言ったのだ」と当時を振り返った。「われわれにとって、若者や若い家族といった特定の世代が小東京に全く関心を持たないというのは、大きな懸念だった。もし小東京を訪れない世代がいたら、地域とのつながりも、この地域に対する思いもなくなり、この地域の将来も考えられなくなると思われた」と、計画発起の経緯を説明した。

ケビン・デ・リオン市議は、州議員時代にAB31条を制定し、プロポジション84で州の公園レクリエーション局に割り当てられた4億ドルの資金をどのように使うべきかというガイドラインと基準の確立に尽力した。武道館は、その中から500万ドルの資金を受け取った。デ・リオン氏はあいさつで「小東京地域からだけでなく、ロサンゼルス市、LA郡、全米や世界中から少年少女が集まってくる。この施設は、そのような活気とエネルギーをもたらすだろう」と述べた。
ミゲル・サンティアゴ加州下院議員は、21年の施設運営のために州予算から30万ドルの資金を確保した。「武道館は私たちのコミュニティーの全てだ。武道館が完成したことで、この地域は大きく変わることだろう。当地域には公園が少ないので、ここにバスケットコートができたことは、この地域を変えることになる」と述べた。
日本領事館の武藤顕総領事は、LTSCのスタッフに祝いの言葉を述べた後、昨年に東京五輪にちなんで領事館とテラサキ武道館や他の小東京の関係者が協力して開催した「ビッグゲームズ・イン・小東京」に触れた。「テラサキ武道館を通じ、さまざまな背景を持つ人々がスポーツや文化に興味を持つことで、強いコミュニティー意識が育まれ、小東京とロサンゼルスのダウンタウンの活力が高まることを期待している。今こそ団結する時であり、テラサキ武道館はその目的に向かって、貢献を果たすことができるだろう」と力を込めた。

式典ではマセオ・エルナンデスさん率いるイーストLA太鼓の演奏やウォルト・ニシナカさんによる獅子舞が披露された。また、式典の冒頭では書道家の芳田訓晴さんが、テラサキ武道館への願いを込めた「繁栄」の文字を大胆な筆致で書き上げた。
体育施設の建設を支援し、350万ドルを寄付して武道館に名を冠したテラサキ・ファミリー財団のキース・テラサキ氏も登壇し、あいさつを述べた。故ポール・テラサキ博士の息子である同氏は、小東京の日系社会への貢献という父の思いに触れ、旧ステイプルズセンター(現クリプトドットコム・アリーナ)がコンベンションセンター付近の都市再開発につながったように、テラサキ武道館が小東京の活性化につながるという夢を語った。
「テラサキ武道館によって、人々が日本文化を体験しようとまた戻ってくることを期待している。25年前にコンベンションセンターの周辺を歩くことは安全とは思えなかったが、今ではとてもにぎやかな地区になった。テラサキ武道館が小東京の未来の『クリプトドットコム・アリーナ』になることを願っている」と期待を込め、言葉を結んだ。【グエン・ムラナカ、写真=マリオ・レイエス】
