バットマン役を完璧にこなしたロバート・パティンソン(右)とゴードン警部補を演じるジェフリー・ライトPhoto by Jonathan Olley/™ & © DC Comics © 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 「ザ・バットマン」の新シリーズの主役にロバート・パティンソンが起用されたと聞いた時、「ミスキャストだ!」と思ったのは私だけではないハズ。バットマンといえば、ワイルドで、マッチョで、戦闘能力も抜群というキャラクターなので、草食系のナヨナヨ感たっぷりなイメージのパティンソンはまるで向いてないと思ったのだ。
 しかし、映画を見ながら自分の考えは大間違いだと気付いた。今回のバットマンはまだ若く、戦闘能力は確かにあるものの、傷も負う。両親の死の悲しみを引きずっており、哀愁感漂うキャラクターとして描かれている。そんなバットマンことブルース・ウェインは、パティンソンの出世作となった「トワイライト・サーガ」シリーズで彼が演じた、人間の女性にゾッコンとなって切ない思いに身を焦がす吸血鬼、エドワードの姿に重なるものがあった。
 瞳の奥に悲しみをたたえ、癒やされない心の中に空いた穴を自警団的行いで埋めようとするブルースは、大富豪という家柄もあり、どことなく紳士的な雰囲気も持つ。エドワード役で見せたパティンソンの演技力と雰囲気が存分に生かされた起用だったのだ。

愁いのあるキャラクターならお任せなロバート・パティンソンPhoto by Jonathan Olley/™ & © DC Comics
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 残りの気がかりは体型。トワイライト・サーガでもバッシングされた、超細身で筋肉ゼロな外見はバットマンの筋肉を強調したスーツでカバーはできても、脱いだら戦闘シーンがすべてウソに思えてしまうようなヒョロヒョロだったら台無しになる。しかし、撮影前にしっかりと体作りをしていたパティンソンは、今回の役を完璧なまでにこなした。
 共演陣も強力だ。敵役リドラーには、若手実力派として数々の賞に輝いてきたポール・ダノ。オタクで変人のキャラクターを演じさせたら彼の右に出る者はいない。これまたハマリ役だ。
 バットマンと信頼の絆で結ばれているゴードン警部補を演じるジェフリー・ライトは、お馴染みの深みのある独特の声だけでなく、その演技力は「007」シリーズでも実証済み。彼がスクリーンに現れるたびにそのシーンのクオリティーが一気に上がる。今回も重厚感をアップさせていた。
 雨が降り続く夜のシーンばかりが続く本作。冒頭からスクリーンいっぱいに漂う緊張感と、得も言われぬフラストレーション感は、登場人物たちが抱える感情を、言葉を使わずに表現している。
 アクション、カメラワーク、音楽の使い方(流れるタイミングは絶妙!)、そして、ダーク路線を娯楽に見事に転化させた本作。ライバルのアメコミ社マーベルが、明るさにコメディー要素とホロリと涙する感動場面を加えたエンターテインメント性に富んだ作品で大ヒットを飛ばし続けることへの挑戦状といえる作品となった。ぜひ劇場で見てほしい。
 各映画館で公開中。配信はHBO Maxで。

 THE BATMANーザ・バットマン ゴッサム・シティーの市長がリドラーと名乗る人物に殺害される。ゴードン警部補の依頼で犯人捜しをすることになったバットマンは、犯罪がはびこる街で謎の女性セリーナに出会う。やがて2人は、街に巣くう不正と非道な事実と対峙(たいじ)することになるのだった。(はせがわいずみ)

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