グランドキャニオン・ビレッジ内で催した10周年記念式典で、共演したホピ族とケン・コシオ氏(前列右端)と写真に納まる礼文高校の生徒たち。前列左端が阿岸さん

 北海道礼文町の海外交流事業が今年3年ぶりに再開し、礼文高校の1年生18人が訪米した。10年の節目を祝う式典の開催や、国立公園見学、姉妹校の訪問、ホームステイなど12日間の研修日程を精力的にこなした。

 礼文高校は北海道西方60キロに位置する離島・礼文島にある日本最北に位置する高校で、2012年から毎年、生徒をロサンゼルスの日米交流研修に送り、19年にはバーバンク市のジョン・ミューア中学校と姉妹校協定を締結するに至った。コロナ禍の中断を経て再開した今年はネバダ州、アリゾナ州にも足を延ばし10周年記念式をグランドキャニオンの清廉な空気の中で実施した。グランドキャニオン・ビレッジ内の施設「シュライン・オブ・ジ・エイジス」で式典を行い、ネイティブアメリカンのホピ族と和太鼓のケン・コシオ氏の演奏と共に、生徒は「よさこいソーラン」を踊った。

ジョン・ミューア中学校を訪れ、体験授業を受ける生徒たち

 ロサンゼルスで一行を受け入れる阿岸明子さんは「毎年楽しみに準備しているが、今年は中断した2年分の気持ちを込めた」と話し、10周年記念をグランドキャニオンで実施したことについて「広く雄大な景色の中でのパフォーマンスを夢に描いていた。ウクライナ紛争の最中だが、戦争のない良き将来を望んで演奏しようということで、願っていたことが実現した」と10周年への特別な思いを説明。「生徒も頑張って朝早く起き、疲れていてもやるときは奮起し、キラキラした笑顔を見せてくれた」と話した。参加した生徒の山内恋音さんは「礼文島の景色と違う景色にびっくりした」とグランドキャニオンでの思い出を口にする。式典を含む研修前半には小野徹町長以下4人から成る礼文町代表団も同行した。
 ロサンゼルスに入った研修の後半は米国人家庭にホームステイしながら、ジョン・ミューア中学校、ノートルダム高校、オレンジ郡のユニバーシティー高校との交流や、日本領事館への訪問、アナハイム球場での野球観戦などを実施した。訪問先の学校では受け入れ側の生徒と一緒に「よさこいソーラン」を踊るなどした。特に5日間のホームステイは多くの生徒が「一番の思い出」として挙げるもので、「言葉は分からなかったがホームステイ先の同年代の家族と一緒にテレビゲームをして楽しかった」「優しくしてもらった」「ビーチに連れていってもらった」「大きな家。家の中で靴を履いたり、犬を飼ったりしていた」などと、ホームステイを終えた生徒たちからはそれぞれの体験が語られ、日常生活を通じた異文化体験が強く心に焼き付いた様子が伝わった。高橋悠真さんは「人とのコミュニケーションがためになったと思う。最初は大変で、発音の違いから相手を困惑させたが、うまくジェスチャーを使えるようになってきた」。嘉義侑輝さんは「将来警察官になりたいと思っていて、外国人と関わることが多いと思うので、自信が付いた」と話した。

ノートルダム高校で生徒に囲まれ、よさこいソーランを踊る礼文高校の生徒たち。ノートルダム高校の生徒も一緒に踊り出した

 研修に最後まで随行した礼文町教育委員会の藤澤隆史さんは、これまで10年、日本側の下準備に関わり内容については把握していたが、今回初めて訪米して「充実したプラグラムになっていることを実感した」と胸を張る。事業のハイライトはホームステイだが「これは受け入れ家族があってのこと」と感謝し、姉妹校との交流では「訪問先も準備をして待っていてくれているので、当校側ももっと準備して、今後の交流の内容をさらに高めていきたい」と抱負を語った。さらに、「研修実施の決断は6月で、今年は準備期間が短かった。町民のコロナへの不安などを解消しないと海外に出るのも難しいと感じていた。しかし、水際対策が緩和されて、追い風だった。実際にこちらに来てみて、人々は日本ほど神経質にはなっていないという印象を受けた」と、事業再開への道筋を語った。「2年中断したことで、現3年生がこちらに来ることができなかったのが残念だが、現2年生は11月に再訪する予定。さらに来年以降に続けたい」と期待を込めた。
 前出の阿岸さんは「10年はあっという間だったが、10年できたことは奇跡的だとも思う」と話し、礼文町の応援があってこそでプログラムができていることを強調する。「米国は銃社会で怖いとか、言葉が通じなくて大変といったことを乗り越えて準備し、それが実っている。この体験により、礼文の町がグローバルになるだけでなく、米国側のホストファミリーも喜んでいる」と、交流が双方向に成果をもたらすことを指摘する。「この交流の輪が広がり、平和な世界に貢献することが私の願い。これからも礼文の町からの発信を応援したい」。
 コロナ前までは走り続けていた毎日だったが、コロナ禍を通じて「自分のことや人との関わりについては立ち止まって考える時間を皆が持ったと思う」と阿岸さん。「コロナは大変だったけれどプラス思考で考え、困難を乗り越えて、人間関係が優しくなったのではないか」と、社会への思いを話した。 (長井智子)

グランドキャニオンを訪れ絶景に感動した生徒たち

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