

公益社団法人「大日本農会」による令和4年度農事功績表彰者への伝達式が25日、総領事公邸で行われ、南カリフォルニア地方全般で植木剪定(せんてい)専門会社を経営する続木宗秋さんと、サンディエゴで造園会社を営む大渡浩平さんのそれぞれに緑白綬有効章が曽根健孝総領事から授与された。
総領事があいさつに立ち、2人の経歴を紹介し、それぞれの功績を称賛した。
続木さんは1966年に渡米して造園会社勤務後、82年に植木剪定専門会社「続木ランドスケープ」を設立した。専門的な職業のため高額の経費のかかる専門技師十数人を常時雇用している。加州で有名なカイザー病院、ニューポートビーチのホーグ病院などを顧客に持つ。総領事は「総領事館も公邸の庭の大きな木を剪定してもらっているお得意さまだ」と述べ笑いを誘った。
82年には世界的なゴルフ場設計者、ピート・ダイと共にサイプレス・カントリークラブの仕事をするなど、南カリフォルニア全般に顧客を持ち、日系社会では最大の樹木の剪定会社を誇る

植木剪定事業の傍ら日米文化会館、オレンジ郡仏教会などの各所で奉仕活動を続け、感謝表彰を受けている。趣味のゴルフを通じて毎年多くのチャリティーゴルフイベントに協力し、各種団体をサポートしている。また、多くの水泳五輪メダリストを輩出している出身校の中央大学の関係もあり、日本のスポーツ選手を支援したことで知られた故フレッド和田さんと協力した。現在も日本水泳チームの米国合宿を支援している。合宿地として有名なミッション・ビエホでの練習の世話を45年間続けるなど、日米親善に貢献している。
大渡さんは、庭師の見習いとして静岡県の造園会社で日本庭園について学んだ。81年に渡米し、「モダン禅ガーデン造園」社を設立。南カリフォルニアの生活様式や文化、建築様式、気候や土壌、植栽を考慮し、石と水を軸に新旧を融合させた、ユニークで芸術的かつ機能的なデザインを心がけている。また、繊細で美しい日本の職人技を継承していくことが、日本庭園の持つ優れた適応性とサステナビリティーを広めることになると信じ、米国内で幅広く事業を展開している。特に石と水の造形デザインは多くの雑誌やメディアにも取り上げられ、さまざまな賞を受賞している。

2011年の東日本大震災直後、サンディエゴの有志と共に「SDJEN(San Diego Japanese Emergency Network)」というボランティアグループを設立し、代表としてサンディエゴでの募金活動を行った。また、数年にわたり被災地の中高校生、大学生をサンディエゴに招待するホームステイプログラムを立ち上げたり、被災地の支援活動に関わるなど日米親善に尽くしている。
総領事は2人の受章に祝意を込め、「続木さんと大渡さんは素晴らしい功績を挙げており、ここに表彰する。今後もそれぞれの重要な事業の成功を願いたい」と述べた。
続いて大日本農会南加支会の小山信吉会長が祝辞を述べた。小山会長は当地の日系庭園業の歴史を紹介し、第2次大戦前の排日の中、「1世のガーデナーは、お客さんの庭を自分の庭のように、献身的に手入れをし、『ガーデナーなら日系人だ』という信頼を得た」と力説した。日米開戦で収容所生活を強いられた日系人は終戦により出所し、再出発は無一文だったが、それまでに長い時間をかけて1世が築いた信用という遺産があったため、多くの人々がガーデナーの職業に就き、戦後の日系社会の復興に寄与したことを強調した。
小山会長は、続木さんの仕事について、「長い間努力し、顧客の信用を得ている様子が目に見える。日系社会で一番大きな樹木剪定社になった理由がよく分かり、大変に感動した」と語った。また大渡さんの事業について、乾燥した当地の気候と風土に適した造園を行い、独自の工夫を重ねていることを称賛した。日本と異なる気候で樹木や植物の成長が早いことから2、3年の成長を見越した植樹設計を施しており「大渡さんは農大で習得した知識を生かして、美しいだけでなく、心に安らぎを与える日本庭園の良さを伝える素晴らしい庭をデザイン・施工している。大変に貴重な存在である」とたたえた。

続木さんが謝辞を述べ、「このたびの受章は自分1人のものではなく、ここにいる皆さんとスタッフ、家族の支えがあったからこそできた」と、感慨深げに話した。「本当にいい人々に巡り会えた」と感謝し、その中でも特に世話になったのは日系2世たちだったと述べ、ガーデナーの先輩でこの日の伝達式で祝辞を贈ったタック西さんや、大学の先輩で元加州最高裁判所判事のジョン・アイソさんらの名を挙げた。社会奉仕の分野では1964年の東京五輪誘致における中南米票の獲得のため各国を奔走したフレッド和田さんから大きな影響を受けたこと、和田さんから教わり水泳や大学野球の日米交流を世話した思い出を振り返った。
日系2世の思い出話を続け「日本から来た人を助けてくれた。訪日経験がない人でも、日本のいい面と米国のボランティア精神などのいい面を受け継いでいて、いろいろ教えてもらった」と振り返った。「次はわれわれが、日本から来る人を手助けしなければいけないと思っている。今日の受章は、サポートしてもらった方々と、もう亡くなってここにはいないが世話になった2世の方々のおかげだと、感謝している」と語った。

大渡さんは「名誉な章を受章し、とても光栄に思う」と素直に感情を表した。81年に渡米し独立、小さな会社設立から出発した。今では9人の従業員を抱える。石や水を用い独自の発想でデザインする禅の要素を取り入れた庭園が顧客に人気がある。
大渡さんは、成功を収めるまでの道のりを「幾つものチャレンジ」と表現し、失敗を糧に立ち直った人生を振り返った。若い頃は何に対しても関心がなかったが、10年ほど前からビジネスコーチに付いて自分を見つめ直し、誤りや怠惰、悪習を改めることで人生は好転したという。「たいていの人々が若いころに学ぶことをこの10年で学んだ。不可能なことはなく、学びに遅すぎることもない」と力を込めた。教訓はビジネス面でも生かされ、「事業に集中し始め、学んだことの一つ一つを教訓として、少しずつ賢くなることができた」と力説し、受章は「支えてくれた家族と友人、ビジネスコーチ、そして素晴らしい従業員にささげたい」と話した。

