山村俊夫・青森県人会館館長の音頭で乾杯する参加者

 青森のねぶた祭を軸に活動する南加青森県人会(木村昭会長)とロサンゼルスねぶた囃子(ばやし)保存会(豊島年昭会長)は5日、小東京の青森県人会館で合同新年親睦会を開いた。両会の会員は新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受け約3年間滞っていた活動の再開に意欲を示し、夏の二世週祭のグランドパレードへの復帰を目指して心を一つにした。

あいさつに立つ(左から)豊島年昭・ロサンゼルスねぶた囃子保存会会長、木村昭・南加青森県人会会長と山村俊夫・青森県人会館館長

 これまでの合同新年会は懇意にする他の県人会や支援者などのゲストを招き毎年約60人でにぎやかに開催していたが、今年はコロナの感染対策として参加者数を絞り、37人が集った。
 初めに両会の会長があいさつに立った。県人会の木村会長は「3年ぶりにこうして皆さんと顔を合わせることができてうれしい」と語った。地元はもとよりランカスター、サンディエゴ、アリゾナ州の遠方からも足を運んだ参加者に謝意を表し、新入会員を歓迎した。「青森県人が一堂に会することはめったにないことなので、今日は短い時間だが楽しくやりましょう」と呼びかけた。

 囃子会の豊島会長は「囃子の練習はもう始めている。でも、ねぶた(山車)をなかなか出すことができない」と、コロナ禍の影響で依然として活動が思うように進まないもどかしさを吐露しつつも、会館内に保管する2台のねぶたについて「今日は皆さんを迎え入れるためにねぶたに明かりをともした」と話し、メンバーの士気を鼓舞した。「今年の二世週祭にまた参加したいと思っている。今日参加した皆さんが協力すれば、ねぶたは成功する。みんなで頑張りましょう」と呼びかけた。

青森民謡を演奏するメンバー。左から岡崎礼子さん、泉山桂子さん、松豊香奈さん

 次に元県人会長で顧問を務める奈良佳緒里さんがマイクを握った。奈良さんは会長時代に青森を幾度も訪問し、県庁やねぶた囃子「菱友会」との関係を築いた。2015年には豊島会長と同時に青森市から観光大使に任命され、当地の各所のイベントに出向き、市から贈られた法被を着て青森の観光や伝統文化の紹介に努めている。東京生まれだが、父親が青森出身で子どもの頃は祖父母に会いに青森を訪れたため第2の故郷と慕っている。「県人会に参加すると青森に帰ってきたように思える。ねぶたが縁で結ばれた互いの友情や絆を大切にし、ねぶたの活動を頑張りましょう」と気持ちを伝えた。

 山村俊夫・青森県人会館館長の音頭で乾杯した。参加者は弁当を広げ談笑し、余興では会員が三味線で青森民謡を弾いたり歌ったり、フランダンスやサックス演奏でも盛り上がった。そしてトリには「待ってましたー」の掛け声の中でねぶた囃子のパフォーマンスが行われた。会場の隅々にまで響き渡る、大太鼓の「ドーン」と打ち鳴らす合図で演奏開始。軽快な笛とかねの音に合わせ、参加者が「ラッセラー」と叫んで盛り立て、二世週祭参加へ弾みをつけた。

囃子の演奏を行う豊島さん(右端)と奈良さん(隣)ら

 サンディエゴから来た青森市出身の新会員、弘田真澄さんは、息子の健晟(けんせい)さん(13)と快晟(かいせい)さん(10)を連れて、初めて新年会に参加した。「米国で青森の方々と知り合うことができて、とてもうれしい」と喜んだ。保存会の存在を知らなかったが昨年、同郷の県人会員から活動の様子を紹介された。「囃子の太鼓と笛、手振りかね、(ハネトの)鈴の音を聞くと、夏が来たと感じる。青森といえば、ねぶたなので、会の活動を知ってワクワクした」と入会の動機を語り、ねぶたの醍醐味(だいごみ)は「老若男女がそれぞれ楽しむことができること。ハネトで跳ねてもいいし、演奏してもいいし、見ても楽しい」と力を込めた。郷里の友人に「ロサンゼルスでねぶたの囃子に入って笛を吹き始めたこと伝えると、笛とかねを送ってってくれたという。「一言伝えただけなのに皆が応援してくれた。ねぶたのつながりはすごいと思った」と、感動した面持ちで話した。ハネトとして子どもの頃から祭りに参加して跳ねていたが、演奏はこのたびが初めての経験。練習にはまだ1度しか参加しておらず、「笛の音を出すのが難しい」。サンディエゴから遠路を運転しての練習参加となるが、「できるだけ出てきて、練習してうまくなりたい」と目を輝かせ、二世週祭でのデビューを楽しみにしている。

笛を演奏するねぶた囃子のメンバー

 ねぶた囃子保存会は昨年の7月に練習を再開し、毎月第1、3土曜に県人会館で練習している。徐々に調子を取り戻している。演奏者はそろっているが、一方でねぶたを組み立て大きな台に載せたり、パレード後に解体する作業の人手不足に悩んでいるという。豊島会長は「(コロナ禍の)3年間で高齢化がいっそう進んだと感じる。ねぶたの活動を続けるには重いねぶたを運ばねばならず、体力のある若者の力が必要なので、ぜひ協力を求めたい」と語った。連絡を取り合っている母県の囃子会については、「二世週祭に参加することを伝える。日程が合って日本から応援に来てもらえればうれしい」と期待を込めた。
 県人会の木村会長は3年ぶりの活動再開について、「新規の入会者を見つけるのが難しい中で、新会員を迎えることができてうれしい」と、幸先のいいスタートを切ったことを強調。「会員が高齢になり、車の運転ができず参加が難しくなっている人も多いが、助け合ってコロナ前のように楽しく活動したい」と抱負を述べた。

明かりをともしたねぶたを背に集合写真に納まる新年会の参加者

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