選挙が近づき、次期政権獲得に立候補者が奔走し始め、有権者の気を引くために「処方薬か食料か、選択を迫られる年金生活者の経済状態」を話題にする。話題にはするが、改善されることはまれである。
この年まで高血圧やコレステロールをコントロールする薬は処方されていたが、ありがたいことにある程度保険でカバーされ、食費を削って処方薬に回すというサーカスまがいの芸当をする必要はなく、切実な問題ではなかった。
なかった、のだが、どうやら最近この問題が他人ごとではなく、現実味を帯びてきた。昨年末の骨折に始まって、春には不整脈の治療を受け、いよいよ後期高齢者のお仲間に入れていただくことになり、服薬が一度に増えた。その中に血栓を予防するための一錠があり、処方した医師が「良い薬なのだが少し高い」と言い、値段を尋ねると「保険がどれくらいカバーするかだ。ドラッグストアで聞いてごらん」とはなはだ無責任。結果から言えば思わず「はァ?」と聞き返すほど高かった。
まず最初の1カ月分が671ドル、次の3カ月分が888ドルプラスという。
そこで娘に頼んで調べてもらったら、医師がカナダのドラッグストアに処方箋を出してくれたら40ドルちょっとで同じ薬が買えるという。コーペイ・カードを入手しようと頑張ってみたがこれも無理。結局製薬会社の言い値で買わされた。薬九層倍というが、その中から政治家には堂々と選挙資金が贈られ、企業がぼろ儲けをするのを見て見ぬふり。これではまるで弱い者いじめじゃないですか。
薬も銃も国が規制する力を持たないのが情けない。
ノーブランドが発売されるまでには2、3年かかるらしく、これではシニアが食費か薬代かの選択を迫られるはずである。
この薬はテレビのスイッチを入れればポンポンとコマーシャルが打ち出されてくる。どうやら私もあのコマーシャル代を払わされているらしく、腹立たしい。
血栓はストロークや心不全で即あの世行きの危険要因だと言われれば、食費を削ってでも、ということになり、まあこれは念願の減量につながるかもと、変なところで自分を慰めている。(川口加代子)
