1年ほど前にご主人を亡くされたMさんから久し振りに電話をもらった。例のパンデミックの影響で間遠くなっていたので、元気そうな声が懐かしかった。
ご主人が亡くなった後、娘さんはすでに結婚して他州に移っていたので独り住まいになったが、大きな家は管理も大変なので、この際売ってコンドでも買って引っ越すことに決めて知り合いに相談したところ、「今は売り手市場で、売るなら今年ですよ」という助言。早速リアルターに頼んでマーケットに出したところ、初日に数十件の問い合わせがあり驚いたという。予想以上のスピードで契約が成立し、ホッとしたのもつかの間、まず引っ越し先を見つけねばならず、それにともなって家の片づけが始まった。
ご主人がアーティストでその上趣味でいろいろな収集物があり、それらが所狭しとスペースをふさいでおり、たくさんの絵画や諸道具、膨大な数の「物」が残されているのに気が付いた彼女は、一瞬ぼうぜんとしたものの、もう家は売れてしまっている。処分して長年住み慣れた家を空にして、とりあえずレントした小さな2寝室のコンドに移らねばならない。
背水の陣である。休む間もなく家の片づけに挑戦、慈善団体に寄付をしたり、友人にもらってもらったり、新しいスペースには最低限必要な物だけを選び、思い出のいっぱい詰まった品物も、目をつむって手放した。
「中身が何か分れば、それ以上広げないで分別し、英語の書籍は寄付し、日本語の書籍はリサイクル、判断しかねるものは倉庫を借りて保管、あとはジャンクの処分をしてくれる会社に連絡して来てもらい、ゴミ一つ残さず持って行ってもらいました。今とても身軽になってホッとしています。いろんなものを手放したのに、かえって豊かになったような気がします」。これは彼女の正直な声である。
不要物を引き取ってくれる業者や団体などのインフォメーションを頂いた。Mさんほど手際よくやれるかどうか分からないが、近い将来私にも必要な情報である。いつか読もうと積み上げた書籍、そのいつかがもう決して来ないことをよく知っている私である。(川口加代子)
