3人の鬼女が登場する「紅葉狩」

 広島県北広島町の神楽の公演が11月19日、小東京のアラタニ劇場で行われた。迫力満点のパフォーマンスは観客を魅了し、終演後にはスタンディングオベーションが数分にわたって続き、大盛況で幕を閉じた。
  同公演は北広島町の熱い思いで実現した。今年5月に第49回先進国首脳会議(G7)の開催地となった広島で各国首脳に神楽を披露する選抜チームが作られた際に、北広島町の神楽団員がメンバーのほとんどを占めたこともあり、地元で海外公演への気運が盛り上がったという。

鬼女の妖術をくもの巣投げテープで見事に演出(「紅葉狩」より)

 北広島町は広島県内でも神楽が盛んな地域で、人口1万8千人ほどにもかかわらず町内には神楽団が60以上ある。海外公演の経験も豊富でロシアや中国をはじめフランスのパリコレクションでも披露しているが、米国本土での公演は未経験だったこともあり、今回のロサンゼルス行きを企画した。北広島町の箕野博司町長は「広島には神楽ファンの企業も幾つかあり、今回の公演は企業版ふるさと納税を使って実現した。広島の放送局RCC中国放送の協力も強い味方となった。今回の公演が、ロサンゼルスの人々が北広島町を訪れるきっかけになればと思っている」と話す。
 この日上演されたのは「紅葉(もみじ)狩」と「八岐大蛇(やまたのおろち)」。紅葉狩は、信州の戸隠山の鬼退治を命じられた武将が色づく木々を楽しむあまり道に迷い、鬼女の妖術にはまるも退治に成功するというストーリー。お面と衣装の早替わりは見事で、そのたびに会場から拍手が沸き起こった。豪華絢爛(けんらん)な衣装も観客の目を奪った。

8体のオロチの演技は大迫力で、ポーズをキメる度に客席から大きな拍手が送られた(「八岐大蛇」より)

 八岐大蛇は出雲が舞台の有名な神話が題材。須佐之男命(すさのおのみこと)が大蛇を倒して娘を助ける話だ。大蛇8体が舞台狭しと大迫力で暴れポーズを決めるるたびに会場からは歓声と大きな拍手が送られた。
 公演のパフォーマーは16人で、平均年齢は30歳。女性が2人。全員、仕事を持っており、神楽は無報酬で行っているという。
 終演後、出演者の1人、栗栖(くりす)和昭さんは「素晴らしい声援で、私たちが感動を与えないといけないのに、逆に皆さんから感動をいただいた。私たちはそれぞれ違う神楽団に所属していて、舞い方やリズムなどが違うが、練習を重ねて調整した。今日の本番は最高のパフォーマンスができたと思う。今回のメンバーには20代の若者もいる。若い人たちが海外公演を経験して、神楽界がさらに盛り上がっていくのを楽しみにしている」と語った。
 奏楽を担当した盛本奈々さんは「北広島町は神楽が盛んで、小さい時からずっと神楽のある環境で育ってきた。祖父や兄や親戚も神楽をしていたので、私もやってみたいと思い、小学6年から横笛を練習し始めて、中学1年でデビューした。海外公演は初めて。拍手する場面が日本と違うのが興味深かった。スタンディングオベーションも日本ではないので、感動した」と笑顔を見せた。
 会場に来ていたフランとデイビッドのウェブさん夫妻は「体を使った表現力は素晴らしく、カラフルな衣装はとても美しかった。激しい舞いの後のせりふも息を切らすことなく滑らかで驚いた」と感想を語った。また、グループで観劇していた日系3世の高齢者たちは「太鼓も衣装も全て本当に素晴らしかった」「早替わりは目にも留まらぬ速さで、目が追いつかなかった」「細かいところまで丁寧に作り上げていて、日本らしい素晴らしい舞台だった」と口々に話し賞賛した。(はせがわいずみ、写真も)

終演後に出演者がステージにそろうとスタンディングオベーションが沸き起こった
大蛇と戦う須佐之男命(「八岐大蛇」より)

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です