吉田選手(中央)に束になってかかっていく子どもたち

 日本サッカー界の顔で現在米国プロサッカーリーグMLSのLAギャラクシーで主将を務める吉田麻也選手が12日、カーソンのホームスタジアムの練習場で9〜12歳の子どもを対象に日本語による無料の1日サッカースクールを開いた。定員を大きく超える応募に抽選を行い、当選した60人の子どもたちが参加。ウォーミングアップやミニゲームなどを行い、元気にフィールドを駆け回った。 (長井智子)

ドリブル突破を試みる少年と吉田選手(左)

 吉田選手と日本から来たアシスタントのコーチらが指導した。吉田選手を含む大人チーム対子どもチームのミニゲームでは、吉田選手は模範の技を披露しながら指導し「ナイスボール」「ナイスセーブ」などと子どもたちほめ、また「今日は母の日だから、お母さんにいいプレーを見せてあげて」と話しては見守る父母を喜ばせた。吉田選手の気さくで明るい人柄と随所に見せる鮮やかなボールさばきに魅了され、子どもたちの顔には笑顔があふれた。
 ミニゲームの後には吉田選手の使用するスパイクやLAギャラクシーのユニホームが当たるじゃんけんゲームやサイン会も行い、大成功のイベントとなった。
 参加者の1人、棚橋彰大(しょうた)くん(12)と家族はサンノゼからやって来た。彰大くんはサンノゼのクラブチーム「オールスターズ」に所属しており吉田選手と同じセンターバックでプレーする。「背がとても高かった」と吉田選手の印象を語り、「将来はプロ選手になりたい」と言う。一方、「祈るような気持ちで知らせを待った。当選には子どもより親の方が喜んだかも」と笑う父の章仁さんは、「今日は友達が誰もいない場所だったが、最後には周囲と仲良くなっていた。サッカーの経験が、コミュニケーションができる、人脈ができる、といった将来の力になることを期待する」と話す。母の昌未さんは「米国のクラブチームとはまた違った楽しい練習ができて良かった。私も楽しかった」とほほ笑んだ。

じゃんけんゲームで勝ち、吉田選手からサイン入りスパイクを贈られた西大河くん

 工藤泰良(たいら)くん(9)は日系少年サッカーチーム「LAウイングス」と、南カリフォルニアサッカーリーグ(SOCAL)所属のクラブチーム「ビーチフットボールクラブ」でプレーしている。ポジションはゴールキーパーで、「今日は大人のシュートを止めることができた」とうれしそう。母の英美子さんは「有名な選手から直接教えてもらえる貴重な機会だった」、父の哲哉さんは「吉田選手はシーズン中で、昨日も試合があった。スポンサー企業や主催者も含めて、多忙にもかかわらずこんな機会を作ってくれてありがたい」と感謝を口にした。
 西大河(たいが)くん(10)も「ビーチフットボールクラブ」でサッカーをしている。じゃんけんゲームに勝ち、吉田選手のスパイクを手に入れた強運の持ち主は「吉田選手はうまかった」と話す。母の優子さんはクラブチーム主体の米国の少年サッカーを経験してみて、「日本の育成システムの良さを取り入れたサッカークラブが米国にあったらいいのに」と思っているそうだ。「ぜひ吉田選手に要望したい」と気持ちを語った。

巧みなリフティングで翻弄する吉田選手(左)

念願のサッカー教室実現
熱意伝え重田さんと意気投合
地域社会への貢献も果たす

 吉田選手の米国でのサッカースクール実現は、吉田選手と「新撰組レストラングループ」の局長、重田光康さんとの会食での会話から始まったという。昨年8月にギャラクシーに入団した吉田選手はこれまで欧州や日本でサッカースクールを開催した経緯があり、米国での開催を熱望していた。
 重田さんはその日を振り返り、「吉田選手のサッカーに対する思いに感銘を受けた」と話す。それは吉田選手の、少年少女にサッカーを通じていろいろなことを教えたいという熱意、地域社会貢献への希望、そしてサッカー界に対してはサッカースクールの活動を通じて、それを後輩のプレーヤーたちにもつなげていきたいという展望だったという。飲食店を展開する重田局長の理念は食文化を通じて人々が人種を超えて協力し合い、より良い世界を築くことであることから、吉田選手の思いに意気を感じ、協力を申し出た。それから8カ月後、多くの日系企業の協賛を得て、実現にこぎ着けたという。

女子チームの選手とハイタッチする吉田選手(左)

 日本総領事館の曽根健孝総領事は「こちらで活躍する吉田選手の協力によって、日本人、日系人がサッカーにさらに親しむきっかけができ、ひいてはスポーツを通じて人々がつながっていけることを望む」と話し、「新撰組の重田局長と日系企業が協力して実現できて、本当に良かった」とイベント開催を喜んだ。
 吉田麻也選手 1988年生まれ、長崎市出身。日欧6チームで活躍し、昨年8月にロサンゼルス・ギャラクシーに加入した。ポジションはディフェンダー。ワールドカップ3回(2014、18、22)、五輪3回(08、12、20)出場。

日本人同士、異国で頑張る
コミュニティーの輪広げたい

 指導を終えた吉田選手は記者の取材に応じた。日系のサッカー少年少女との触れ合いを楽しんだ吉田選手は、1日サッカースクールの継続に意欲を示した。
 —今日振り返ってどうだったか。
 楽しかった。せっかくこれだけ日本人のコミュニティーがある地域に移籍してきたので何とかこういうイベントをやって子どもたちと触れ合う機会があったらいいなと思っていたので、うれしかった。これで終わらずに2回目3回目と続いていけるようにしたいなと思っている。

子どもたちにサインをする吉田選手

 —この経験を通じて子どもたちに何を学んでもらいたいか。
 サッカーを好きになってくれること。そして日本ではない国で仕事をしている僕みたいな人間が少しでも子どもたちの刺激になったらうれしい。僕自身も学生時代に欧州で当時プレーした選手たちを見て誇りに思った。多分、今後MLSにもっと多くの日本人選手が来るので、日系の企業を通して、次の選手たちがまた子どもたちをインスパイアできていけたらいいと思う。
 —シーズン中にもかかわらずのイベント開催。そこまでしてやりたかった気持ち、この地元のコミュニティーに対する気持ちとは。
 僕自身がイギリスや日本でもずっと(スクールを)やってきたので、(米国に)ただサッカーをしに来ただけではなく、いろんな経験をしたいし、同時に自分の経験も還元したいと思っている。共に違う国で頑張っている者同士、助け合ったり励まし合ったりができたらいい。子どもたちだけじゃなく、日本人のコミュニティーや企業のコミュニティーが、さらにつながって、みんなで協力して、輪を大きくしていけたらいい。

吉田選手(中央)を囲む子どもたちと父母ら
吉田選手は参加者60人全員にサインし集合写真に納まった
吉田選手(中央)と記念写真を撮る未来のなでしこ

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